研究課題/領域番号 |
20K06195
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
|
研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平野 旭 呉工業高等専門学校, 電気情報工学分野, 准教授 (60594778)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 信号処理 / ストレス度推定 / 呼吸信号 / 呼吸波 / 魚類 |
研究開始時の研究の概要 |
稚魚サイズの小魚のストレスが非侵襲かつ遠隔で計測可能になれば,現行の稚魚養殖法に対する問題点の改善や,水族館での小型水息生物に対するストレスフリーな環境提供など,次世代の水産資源管理手法が検討可能になりうる. 本研究では,魚類の呼吸信号が非侵襲で計測できる点に着目し,呼吸信号から自律神経のバランス状態(ストレス度)の推定を試みるとともに,推定アルゴリズムを呼吸波計測装置に搭載して24時間連続でストレスを推定する装置の開発を試みる.
|
研究実績の概要 |
水槽中には,呼吸信号をロストしないために,4チャネル分の計測電極を配置している.データ管理およびシステムの都合上,呼吸計測は約1分間連続で計測し,その後,ファイルサーバへアップロードと管理をしている.過去の分析では,最も大きな信号が計測されつづけたチャネルを分析者側で選定し,そのチャネルの1分間データを用いて提案するストレス指標の有用性を検討をしてきた.実際にはメダカの遊泳向きが変わることに応じて,呼吸信号がもっとも大きく計測されるチャネルは変化する.そこで本年度は,呼吸信号がもっと大きく計測されるチャネルを「有効チャネル」と定義し,時々刻々と有効チャネルを切り替えながら,ストレス指標の変化を確認するシステムに改変を試みた.昨年度までのシステムでは,メダカが急激に遊泳方向を変えたことによってストレス指標が大きく変化し,ストレスを受容しているであろう1分間のなかでも,ストレス受容が解除される時間帯が存在する結果となっていた.この点について本年度,有効チャネルを自動選定することが可能なシステムとなり,ストレス受容の状態を時々刻々と推定することが可能になった. メダカの場合,計測用水槽になれてしまうと呼吸はノイズにうもれてしまうほど小さくなり,運動が活発な場合や危険を感知した場合に呼吸信号が大きくなる傾向がある.現状では,呼吸信号が計測されていない時間帯についてもストレス指標の計算を行ってしまう.また,生化学的分析(コルチゾル分析)によるストレス度と提案する呼吸信号からのストレス指標の比較・検証まで実施できていない点が課題として残っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水槽のどこを泳いでも呼吸信号をロストしないために,水槽中には4chの計測電極が配置されている.昨年度までは,特定のchで計測した信号を用いてストレス度分析を行っていたが,遊泳するメダカが向きを変えることにあわせて,最も信号が大きく計測されているチャネルを自動選定し,そのchの信号を用いてストレス度分析をする必要が課題としてあった.この点については,計測プログラムを改変し,課題をクリアするに至った. 血中コルチゾル濃度を計測するために必要な採血の方法については,外部支援者から紹介頂いた近隣の施設で手技を学ぶに至った.計測実験と平行して専門外である生化学分野の実験をすることが難しい現状を踏まえ,採血から血漿の分離までを独自に行い,当初の計画通り,分析自体の外部委託を検討したが,採取できる血漿量自体が非常に微量である為に受け入れ機関が見つからない結果となった. 電極と電極コードの接着面が水中に存在することで,経年劣化とともにノイズがのり,計測不能に陥っている可能性に対する点の改善に取り組めていないことや,被験魚の大きさや個体差によって,信号が計測されにくいなどの要因も重なり,有効なデータ計測を十分に取得できない点を総合的にふまえて標記の区分で判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
提案するストレスインデックスは,ストレス受容レベル(推定)と通常レベルを推移することが多く見受けられる.人をはじめとした自律神経のメカニズムに基づいても妥当な変化であると考えられる.昨年度発表した「網に引っかかっていた個体」は,ストレス受容レベル(推定)の時間帯が1日以上の長時間続いており,救出後にインデックスは通常レベルに戻ったが,その2~3日後に死亡が確認された.これらの点を踏まえると,ストレスを感受したことを検知してすぐに解剖による採血と血液分析をするのではなく,ストレス受容の連続性と生存の関係性を見極めてから解剖する方が,倫理面に配慮した実験になると判断した.倫理面に配慮した小型魚類に対する実験法について,国際的に意見が割れている現状を踏まえてもその方が良さそうであると判断される. そこで,従来研究で構築してきた複数匹同時計測システムと,本研究で構築してきた信号強度が強いチャネルの選定法およびストレスを推定する指標を総合し,ストレス指標の長期連続的な分析システムを構築する.長期連続的にストレス指標の推定をリアルタイムで行えるようにする.水温の急激な変化や色刺激等に対するストレス指標の変化の確認,同じ刺激に対する個体ごとの刺激受容の分析,単発的な刺激に対してストレスが解除される時間の分析,ストレスの連続受容時間とその後の生存確率に関する分析を行う.また,場に慣れていることで呼吸信号が計測できていないときには,ストレス指標を算出しないモードの導入を試みる. それらの知見にもとづいて,ストレスを受容してから血液分析に踏みきるタイミングを決め,提案するストレス指標の最終的な有用性を裏付ける方向で進めていく.
|