研究課題/領域番号 |
20K06202
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青山 潤 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (30343099)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 岩手県 / サケ / 天然 / 繁殖 / 産卵環境 / 選択性 / 水温 / 繁殖生態 / 河川環境 / 三陸 / 産卵生態 / 降河生態 |
研究開始時の研究の概要 |
サケマス類の中で進化的に最も進んだ生活史を持つサケは、淡水域への依存度が低く、生涯のほとんどを海で過ごす。加えて、産卵遡上した親魚の多くが人工ふ化放流事業により捕獲されるため、これまで我が国の河川においてサケが顧みられることはなかった。しかし、近年になって天然で産卵する“野生魚”が漁業資源に寄与していること、河川での水温依存的な稚魚の減耗が資源変動要因の一つであることなどが示唆され、河川におけるサケの生態に注目が集まっている。そこで本研究は、三陸沿岸の3河川をフィールドとし、(1)サケ野生魚の産卵・降海生態、(2) 放流魚と野生魚の降海行動の差異、およびこれらに対する水温の影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
サケマス類の中で進化的に最も進んだ生活史を持つサケ(Oncorhynchus keta)は、淡水域への依存度が低く、生涯のほとんどを海で過ごすことに加え、産卵遡上した親魚の多くが人工ふ化放流事業により捕獲されるため、これまで我が国の河川におけるサケの生態が顧みられることはなかった。 そこで本研究は、三陸沿岸の河川をフィールドとし、(1) 産卵床調査および稚魚調査を通じ、サケの産卵・降海生態を明らかにする。(2)放流魚と野生魚の降海行動の差異を明らかにする。(3)水温環境の異なる河川の比較を通じ、(1)および(2)に対する水温の影響を明らかにすることを目的とした。 これまでに岩手県大槌町の小鎚川と釜石市の鵜住居川におけるサケ野生魚の産卵床形成環境および稚魚の降海生態を明らかにする研究を展開し、湧水量とそれに関連する水温の影響が大きいことを明らかにした。しかしながら、2020年以降の全国的なサケ回帰量の減少により、特に孵化放流事業が行われている稚魚を対象とした調査に対し、地元の理解が得ら難い状況が続いている。そこで本年度は、野生魚親魚の調査を継続するとともに、少数の稚魚サンプルからより大量の情報を抽出するため、個体識別のための遺伝子解析の基盤固めを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
小鎚川の河口から1 km-4 km程度上流の約3 kmを調査区間とし、2021年9月13日から2022年2月26日の間に産卵床の調査を実施した。週2回程度の踏査で遡上親魚を計数した。産卵床の計数は隔週で実施し、携帯型GPSで位置を記録し、2017年のデータと比較することにより経年変化を検討した。産卵床は10月4日から2022年2月8日までの間に49床が観察された。遡上親魚は11月以降増加し、12月下旬に最も多く確認された。産卵床は、河口から1 km-2 km程度上流の約1 kmの区間で最も多く観察された。2017年の記録と比較したところ、親魚の遡上時期および盛期、産卵床の分布は両年で同様であったが、親魚、産卵床の数はいずれも2021年は2017年の9-25%程度に減少したことがわかった。
サケ科魚類の既報のマイクロサテライトマーカー19個について、2017年に小鎚川に回帰したサケ親魚48個体を用いてPCRおよびジェノタイピングを行った。その中から、アリルの判別がしやすく、多型が見られたマーカーを14個選抜し、DNAマーカーの候補とした。その個体識別の精度を評価するため、集団中から任意に選んだ2個体間で遺伝子型が一致する確率(Probability of Identity, pi)を各遺伝子座で求め、各遺伝子座のpiを総乗して、遺伝子座全体で任意に抽出した2個体のジェノタイプが一致する確率(PI)を求めたところ、7.09×10-29であった。このことは、サケ野生個体群の中の任意の2個体の間において11座すべてで遺伝子型が一致する確率が1穣分の1であることを示す。過去10年間に日本から放流された稚魚の総和が約20億尾であることを考えると、本研究で構築したDNAマーカーセットは、高い精度で個体を識別できると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
産卵床形成に対する環境影響などは概ね明らかになってきたが、稚魚については十分な調査が実施できていない。来年度が本研究の最終年度となることを踏まえ、サンプリングにより生態情報を得るだけでなく、遺伝子解析による放流魚・野生魚の由来推定などを組み合わせることにより、わずかな標本からできるだけ多くの情報を抽出する必要があると考えられる。今後は、本研究だけでなく、その先に続く研究への準備も視野に入れた展開を進める。
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