研究課題/領域番号 |
20K06206
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓太 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (80722024)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | ボトムアップ型 / 栄養塩動態 / 植物プランクトン動態 / 植物プランクトン / 動物プランクトン / 栄養塩 / 雪 / 雨 / 冬 / 気候変動 / 水循環 |
研究開始時の研究の概要 |
日本海側沿岸域の低次生物生産は大気と陸と海をめぐる水循環に支えられてきたが、今後は、気候変動にともなう降雪の減少、融雪の早期化、降雨の変調などの影響を受けることになる。本研究では、温暖積雪地である舞鶴をフィールドに、水分子の酸素・水素安定同位体比などの識別指標を用い、雪と雨の影響を区別して河川・沿岸域の栄養塩動態を解析し、沿岸域の植物プランクトンと動物プランクトンの動態および養殖二枚貝の成長を調査する。気象条件の異なる複数年の調査結果を比較することにより、気候変動にともなう水循環の変化が日本海側沿岸域の低次生物生産に与える影響を予測し、漁業への影響を考察する。
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研究実績の概要 |
1.科研費採択後1年目の2020(令和2)年度(2020年12月~2021年3月)に実施した観測について,降水と河川水のそれぞれに含まれる水分子の水素・酸素安定同位体比と硝酸分子の窒素・酸素安定同位体比を測定し,経時変化を詳しく調べた結果,以下2点が明らかになった.1-1.河川水の水分子と硝酸分子の起源は観測期間中頃の数日間のうちに急激に変化していた.1-2.観測期間後半には,降雪に起源する水分子と硝酸分子が河川水に寄与していたと考えられた.なお,本観測期間の前半には降雪が多かったものの,後半には降雨が多く,観測期間を通し植物プランクトンの大増殖は見られなかった.
2.科研費採択前の2016(平成28)年度と2018(平成30)年度および科研費採択後の2020(令和2)~2022(令和4)年度に実施した冬季5回の観測について,対象海域の気象条件と栄養塩・植物プランクトン動態の経時変化を比較した結果,以下2点が明らかになった.2-1.冬季降水量が多いほど植物プランクトン現存量も多くなる傾向が認められたことから,降水後の栄養塩供給が植物プランクトンの増殖を促進するボトムアップ型であると考えられた.2-2.まとまった降水に先立ち強風が吹いた場合に珪藻が大増殖したことから,強風による鉛直混合にともない海底から珪藻休眠期細胞が巻き上げられることが,珪藻大増殖の引き金になると考えられた.
3.科研費採択後の2020(令和2)~2022(令和4)年度に実施した冬季3回の観測において,10月から3月までのマガキの成長速度を比較した.当初の予想に反し,植物プランクトン現存量とマガキの成長速度には明確な関係が認められなかったことから,以下2つの可能性を検証するべく分析を進める予定である.3-1.植物プランクトン全体ではなく,植物プランクトンの特定分類群の現存量が重要である可能性.3-2.植物プランクトン現存量よりも水温や塩分などの他の環境要因が重要である可能性.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費採択前も含め冬季5回にわたり,それぞれ異なる気象条件のもとで集中観測を実施することができた.また,科研費採択後には,山地から沿岸までの多地点における採水,沿岸における植物プランクトンと動物プランクトンの採集,マガキの成長実験など,多岐にわたる観測・実験を当初の計画通りに実施することができた.特に,科研費採択後2年目の2021(令和3)年度は記録的な大雪に遭遇し、その影響を追究するに十分なデータとサンプルを得ることができた. 栄養塩濃度については,これまでに得られたほぼ全てのサンプルの測定を完了した.一方,水分子の水素・酸素安定同位体比については専門業者に測定を依頼し,硝酸分子の窒素・酸素安定同位体比については京都大学生態学研究センターとの共同研究により測定を行っている.しかし,高純度ヘリウムが世界的に不足しているため,当初の計画通りに安定同位体比を測定することは難しい状況である.今後は,2021(令和3)年度に得られたサンプルの安定同位体比を可能な範囲で測定しながら,植物プランクトンと動物プランクトンの種組成と密度を顕微鏡観察により分析してゆく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
異なる気象条件のもと冬季5回にわたり集中観測を行った結果,本研究の目的を達成するに十分なデータとサンプルを得られたと確信している.今後は,これまでに得られた大量のデータとサンプルの分析を着実に進めながら,必要に応じ,観測を補足的に実施する.また,現在修正中の論文を早々に再提出したうえで,他の研究成果も整理し,学会発表と論文出版につなげてゆきたい.
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