研究課題/領域番号 |
20K06263
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41010:食料農業経済関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
阿久根 優子 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (90363952)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 農産物・食品貿易 / 新々貿易理論 / フードシステム / 貿易円滑化 / 非関税措置 / 衛生植物検疫措置(SPS) / 貿易の技術的障害(TBT) |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、我が国の農産物・食料貿易に関して新々貿易理論に基づき定量的に実証研究を行うことを目的とする。そのなかでの学術的「問い」は、国際分業が進む農産物・食品貿易に関して新々貿易理論の含意は説明できるのか、自由貿易協定や経済連携協定などの貿易円滑化の経済的影響は世界のフードシステムの中でどの程度でどういった経路をたどるのかということである。これらを実証的に考察するために、本研究は企業の異質性に関する分析、貿易構造に関する分析、貿易円滑化に関するシミュレーション分析での3つの分析テーマで構成される。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、農産物・食品の貿易について新々貿易理論に依拠した実証研究を行うことである。これまで数多くの自由貿易協定により、各国の関税の撤廃や低下が進んできた。そのため、貿易交渉や貿易研究の近年の関心は、非関税措置(NTMs)や貿易円滑化に移ってきている。NTMsに関する貿易円滑化は、各国の国境措置の明文化による透明性の向上と輸出入国間でのルールの調和によって行われる。たとえば、輸入国で国境措置の透明性の向上のためにそれらが明文化された場合、輸出企業にとって順守に要する新たな負担が生じるかもしれない。ただし、その内容が輸出国内のルールと同等であったならば、企業にとっては追加的な負担にはならないと考えられる。 令和5年度は、このような量的かつ質的な側面をもつNTMsの農産物・食品貿易への影響に関する実証分析に取り組んだ。具体的には、輸出国の所得水準別に高所得国への一次産品と加工品の輸出に対する衛生植物検疫措置(SPS)と貿易の技術的障害(TBT)の影響を分析した。まず、高所得国のSPSとTBTの量的・質的な特徴として、輸出国の所得水準や財の種類にかかわらず、措置数ではSPSがTBTを上回り、二国間の措置内容の差異ではTBTのほうがSPSよりも大きいことがわかった。つぎに、高所得国への一次産品の輸出では、SPSとTBTの透明性の向上がすべての所得水準の国からの輸出を促進する一方で、低中所得国からの輸出ではTBT、低所得国からの輸出ではSPSの輸出入国間の措置内容の差異の大きさが貿易を妨げていた。さらに、高所得国間の加工食品貿易では、SPSは措置数と二国間の措置内容の差異がどちらも負に影響しており、貿易障壁として機能していることがわかった。TBTは措置数が正に影響しており透明性の向上は貿易促進に寄与するが、輸出入国間の措置内容の差異の大きさが貿易を抑制することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、当初の研究計画に加えて、令和4年度の学会報告(アジア・太平洋地域の農産物・食品貿易における衛生植物検疫措置(SPS)と貿易の技術的障害(TBT)の影響)で得たコメントに基づき、全世界の農産物・食品貿易を対象にした所得階層国別の分析において、SPSとTBTの質的な側面だけでなく量的な面にも考慮して実施することができた。さらに、その結果を国際学会で報告し、有益なコメントを得ることができた。これらの状況から、上記のように判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の学会報告(所得階層国別の農産物・食品貿易における非関税措置の影響)に対するコメントを踏まえて、報告原稿を加筆修正し学術誌への投稿を行う予定である。また、これまでの学会報告において、自由貿易協定による貿易促進効果に関してより詳細な研究の必要性を指摘されてきた。令和6年度は、この点に関して分析をすすめ、結果を学会報告する予定である。
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