研究課題/領域番号 |
20K06295
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
平松 研 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90271014)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 水田の多面的機能 / 物質循環 / 溶存鉄 / 溶存ケイ素 / 付着藻類 / 河川生態系 / 安定同位体比 / 森林からの物質供給 / アユ / 腐植質 / 水田 / 酸化還元電位 / 流域 |
研究開始時の研究の概要 |
鉄について,水田内の酸化還元状態による鉄の状態と遷移,腐植質を計測することで,どのような状況で水田排水に鉄が溶存するかを明らかにする.また,研究対象としている長良川水系において溶存鉄濃度の分布を計測し,溶存鉄の供給に寄与する土地利用等を明確にする.シリカについては,寄与の大きい伏流水には相当量の水田浸透水が含まれていることから,直接計測と広域地下水モデルにより,水田からのシリカ供給を明らかにする.窒素については水田から排水されたものについて安定同位体比を用いて追跡する.加えて,付着藻類および水棲生物の炭素・窒素安定同位体比を計測することで下流生態系への寄与も明らかにする.
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研究実績の概要 |
位山演習林で得られたデータより,Siの流出は主に岩盤由来であり,落葉広葉樹林流域では雨水が深層域まで浸透し河川に流出しており,針葉樹人工林流域は表面流出の割合が高く,岩盤由来のSi濃度が落葉広葉樹林流域に比べ低いと推測された.出水時採水のSi濃度について,流出量の増加に伴い濃度が低下する要因として,直接流出の多い針葉樹人工林流域の低下割合が大きいことから,降雨による希釈効果と推測された.出水時のFe濃度増加の要因として,流出量が増加するほど直接流出の割合が高くなるため,Fe濃度は表層土壌に依存している可能性が高い.また,FeはDOCとの相関が高く,DOCの変動に伴ってFeも変化した.DOCは表層に多く含まれており,出水時に表層流出が増加すること,また溶存FeがDOCと複合体を形成することでによって濃度が増加したと考えられる.基底流出については表層土壌からのDOCの供給が少ないため,Fe濃度が低く,ほとんど渓流水中に供給されず,下流河川や沿岸海域に大きな影響を持つものではないと推定された.一方で,Siは広葉樹林と針葉樹林によって明確な差異が見られることから,森林の状態変化が河川の付着藻類相に影響を及ぼす可能性があることが示唆されるものとなった.長良川における付着藻類量とSiの相関性は高く,上流域の珪藻類,中流域の藍藻類の優占にも影響が見られた. 水田からの鉄の流出,特に浸透経由の還元水については水の安定同位体比などで推定を試みるものの,試験水田内の機器の故障から十分な成果が得られなかった. 河川藻類への水田の影響を調査する一環で計測していたCNの安定同位体比からは,藻類食のアユの時期的な移動を示唆する結果が得られた.具体的には,夏季に高鷲から千疋あたりの藻類がよく食べられていることや,10月頃の中流域では上流域から落ち鮎が見られることが,安定同位体比からも確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
安定同位体比を用いた藻類とアユとの関係,アユに季節的な移動の推定では,よい結果を得られ,現在論文としてとりまとめをしている.また,森林からのケイ素および鉄の流出についても成果が得られ,現在論文としてとりまとめをしている. 一方で,ケイ素の収支と付着藻類の関係については興味深い成果が得られてきているものの,機器の不具合や水安定同位体比の分析の遅れから,浸透経由の水田からの還元水などのデータが十分にはとれておらず,水田の多面的機能を十分には説明し切れていない.そのため,1年間の延長を申請し,継続調査を行うこととしている.
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今後の研究の推進方策 |
現在,河川,地下水,雨水,水田からの採水を行い,鉄,ケイ素などの水質に加えて,水の安定同位体比を計測するように計画を立て,実施している.このことから,河川水に対する水田の還元水の比率を推察するとともに,浸透経由の還元水量を求めたいと考えている.岐阜大学吉岡准教授は水の安定同位体比に関する研究経験が豊かであることから,助言を得て進めることとしている. 還元水,さらには浸透経由の還元水の比率が推定されれば,それに付随して,水田からの鉄やケイ素の供給を推察することが可能となり,現在計測中の河川内ケイ素分布と合わせて,これまで注目を得ていなかった流域内の溶存ケイ素の動態が明らかとなると期待している.
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