研究課題
基盤研究(C)
胎児期や哺乳期の飼養環境は動物個体の代謝・生理基盤に長期的な影響をもたらすため、短期間の処理で長期に及ぶ産肉性・肉質制御が可能である。本研究では、哺乳期の日長処理が黒毛和種のウシの筋・脂肪組織に及ぼす影響を解析するとともに、日長による増体速度および骨格筋の制御メカニズムについて、マウスを用いた作業仮説の検証や関連遺伝子の機能解析を行う。本研究により、哺乳期の光線管理を利用した新規家畜生産システムの基盤が築かれる。
適切な光線管理は家畜の飼養管理において重要である。本研究では、哺乳期の日長による生体調節機構を解明するため、マウスと黒毛和種のウシを用いた解析を行なった。哺乳期の日長を毎日徐々に延長する長日処理によりマウスの増体が促進された。この影響には、視床下部における成長および神経発達に関する遺伝子群が関与する可能性が示唆された。哺乳期に長日処理を行なったウシでは、短日処理群に比べて、出荷時における総枝肉重量の増加傾向が確認された。また、胸最長筋サンプルにおけるヒストン修飾の一部が、哺乳期の日長により長期的に調節されることが解明された。
本研究は、哺乳期の日長処理による増体促進機序として、単なる刺激応答的な摂食やエネルギー代謝の調節ではなく、生後初期の神経回路リモデリングという長期持続可能な機序の関与を示す初の知見である。さらに、黒毛和種のウシにおいて、哺乳期における光環境の影響が出荷時まで継続し、長期的に枝肉重量やヒストン修飾を調節する可能性を示した。哺乳期の日長情報がエピジェネティックに生体に刷り込まれ、数年スパンの長期的な生体調節を担う可能性を示唆しており、光環境を利用した効率的な生産性向上技術開発への貢献が期待される。
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