研究課題
基盤研究(C)
重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) は血小板減少や白血球減少を伴う高熱、消化器症状、出血傾向を主要症状とし、致死率は6~30%に達する重要な感染症である。本研究は、これら病態の形成機序を病理組織学的解析により解明し、血小板減少や多臓器不全を防ぐための投薬戦略構築に貢献することを目的としている。血小板減少については、血小板産生細胞である巨核球が自己の免疫機構により傷害されている可能性を検討する。多臓器不全の原因となる組織傷害については、ウイルス感染細胞からの細胞死誘導因子の分泌を調べると共に、ウイルス感染細胞がどのように細胞死を免れて体内で維持されるのかについても解析する。
[SFTS発症時の免疫異常について]これまでの年度ではSFTSで斃死したネコのリンパ節では活性化した胚中心B細胞のマーカーであるBcl6やKi67陽性細胞が顕著に減少していること、アポトーシスマーカーであるcleaved-caspase3に陽性を呈するT細胞の顕著な増加が認められることを明らかにした。しかし、解析に用いたネコは抗体価が不明であり、組織変化と実際の免疫応答との関連性が明らかにはできていなかった。この点を明らかにするために、本年度は過去にSFTSVの実験感染を実施し、抗体価が明らかなネコの組織標本を用いて胚中心反応やT細胞の解析を実施した。この結果、軽症で抗体価の高いネコでは胚中心B細胞マーカーであるBcl6陽性細胞が多く、アポトーシスマーカーであるclaeved-Caspase3陽性となるT細胞が少ないことが明らかとなった。以上より、胚中心B細胞の活性化の抑制やT細胞のアポトーシスはSFTSの際に生じる免疫抑制に寄与している可能性が高いものと考えられた。[SFTS発症時に認められる異型リンパ球の生存機構について]本研究では、SFTS発症時に出現する異型リンパ球(形質芽球)の維持・増殖機構についてもSFTSにより斃死したネコの組織標本を用いて解析した。これまでの年度の解析では、これらの内Bcl-XLおよびMCL-1の発現が異型リンパ球で認められた。本年度にはPBL1細胞を用いてSFTSVの感染によりこれら因子の発現上昇が認められるかを解析したが、発現上昇は認められなかった。一方で、SFTSVとこれら因子の多重染色を実施し精査したところ、Bcl-XLやMcl1の発現上昇は必ずしもSFTSV感染細胞のみで認められるものではないことがわかった。このことから、形質芽球の維持・増殖機構については生体内に存在する他の細胞からの働きかけが重要である可能性が示唆された。
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Frontiers in Microbiology
巻: 5 ページ: 1333946-1333946
10.3389/fmicb.2023.1333946
Emerging infectious diseases
巻: 27 号: 4 ページ: 1068-1076
10.3201/eid2704.204148