研究課題/領域番号 |
20K06428
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
井手 香織 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (40550281)
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研究分担者 |
呰上 大吾 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80453934)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | IDO1 / 炎症性疾患 / 腫瘍性疾患 / 免疫寛容 |
研究開始時の研究の概要 |
免疫機構の暴走は重度の炎症につながるため,これを沈静化するシステムがある。悪性腫瘍は初期には免疫機構が攻撃してくれるが,その攻撃を抑える能力を獲得した腫瘍は進行する。この両者に共通する免疫を抑える働きを,免疫寛容と言い,その重要なスイッチがIndoleamine 2,3 dioxygenase-1 (IDO1)である。ヒトなどでは腸炎や腫瘍性疾患の病態や予後にIDO1が関与している報告がある。犬でも炎症性疾患や腫瘍に苦しむ症例が多く従来とは異なる切り口の病態解析が必要なことから,本研究では炎症性疾患(特に腸炎,皮膚炎)および腫瘍性疾患の犬におけるIDO1の挙動と予後因子としての可能性を探る。
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研究実績の概要 |
免疫寛容機構は動物にとって,炎症が沈静化されるというメリットと,腫瘍が宿主の免疫から逃れるというデメリットの両側面を併せ持つ。免疫寛容をもたらす重要なスイッチの一つにIndoleamine 2,3 dioxygenase-1 (IDO1) が知られており,特に腸炎および腫瘍性疾患の病態や予後に関与することが齧歯類やヒトで報告されている。本研究では,炎症性疾患(特に腸炎,皮膚炎)および腫瘍性疾患の自然発症症例 犬におけるIDO1の挙動を明らかにし,さらにこれら疾患の予後因子としての可能性を明らかにすることを目的とする。 2020年度の計画は,①犬におけるIDO1発現組織/細胞を特定することと②今後の解析のために本学附属動物医療センターにおいて,腸炎,皮膚炎,腫瘍性疾患(リンパ腫その他)の症例犬を対象に,生検ないし切除した病変部組織(余剰分)を収集することであった。①は,犬でどの組織・細胞がIDO1を発現するかといった基礎的情報が不十分であるため行った。正常犬の消化管粘膜組織およびリンパ節組織を用いて,免疫組織化学染色によってIDO1を持つ細胞を探索した。現時点で入手できる抗イヌIDO1抗体が無いため,まずマウスおよびヒトに対する抗IDO1抗体のイヌ蛋白への交差反応性を調べた。続いてそれぞれの抗体を用いて,免疫組織化学染色の条件を検討した(パラフィン切片,凍結組織切片,酵素抗体法,蛍光抗体法)。 検討した染色条件のうち,もっとも良好な染色結果がえられた方法をもちいて,犬十二指腸粘膜組織中のIDO1陽性細胞の分布およびこれらの細胞の染色パターンや形態を検討することができた。②は対象となる症例の協力が得られる限り,余剰検体を収集している(次年度以降も継続予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
犬ではどの組織・細胞がIDO1を発現するかといった基礎的情報が不明であるため,初年度は本研究のの主な対象組織である消化管組織,単球系細胞,リンパ節組織を中心に,IDO1発現パターンを検索することを計画していた。 なお,研究期間が始まるとほぼ同時にCOVID19による緊急事態宣言を受けて大学構内への入構規制が始まり,その期間は実験室での研究活動を停止せざるを得なかった。入構規制が解除後に,制約はありつつ次のとおり研究を進めた。 犬の消化管粘膜組織およびリンパ節組織を用いて,免疫組織化学染色によってIDO1発現細胞を探索した。現時点で入手できる抗イヌIDO1抗体が無いため,まずマウスおよびヒトに対する抗IDO1モノクローナル抗体のイヌ蛋白への交差性を,ウェスタンブロットを用いて確認した。続いてそれぞれの抗体を用いて,免疫組織化学染色の条件について検討した(パラフィン切片,凍結組織切片,酵素抗体法,蛍光抗体法)。 検討した染色条件のうち,もっとも良好な染色結果がえられた方法をもちいて,犬十二指腸粘膜組織中のIDO1陽性細胞の分布およびこれらの細胞の染色パターンや形態を検討することができた。 一方,リンパ節組織を用いた検討においては,当初予想していたようなIDO1陽性細胞の分布パターンは認められなかった。また,計画時は予定していた犬におけるIDO1陽性細胞がどの種類の細胞であるのかの特定は,前述の理由により進める事ができず,次年度に継続してすすめることとした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度から繰り越す内容(犬においてIDO1を発現する細胞種類の特定)をすすめるほか,2年度目に計画している「犬の腸炎・皮膚炎の組織におけるIDO1発現パターンの解析」を行うにあたって(腸組織は初年度に検討済み)犬の健康な皮膚組織を用いてもIDO1陽性細胞の分布をまず検討する。 各組織中の犬IDO1遺伝子mRNA量のリアルタイムPCRを用いた定量は過去の研究から手技が確率済みであり,計画にあるその他サイトカイン(IL-27,IL-17)の遺伝子mRNA量に関する同様の手技確率も進める予定である。 計画通り,解析対象疾患である腸炎,皮膚炎,腫瘍組織の検体収集は症例に依存する部分であるが,継続して行っていく。とくに腫瘍組織については,研究分担者の協力を経てすでに集まりつつある。
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