研究課題
基盤研究(C)
好中球やマクロファージからの活性酸素産生を欠如した遺伝子欠損マウスは、殺菌能が低下しているために、生きた病原体が感染すると重篤な肺炎を発症して多くが死亡する。ところが、この欠損マウスは、死菌や菌体成分に曝されただけでも重篤な肺炎を発症してしまう。このような、白血球からの活性酸素産生異常によって感染非依存的な過剰炎症が生じるメカニズムと、その異常が獲得免疫へ与える影響を解析する。
好中球やマクロファージは食細胞NADPHオキシダーゼ(NOX2)やミエロペルオキシダーゼ(MPO)によって活性酸素を産生して感染防御を営む。本研究は、両酵素の欠損マウスが感染非依存的にも肺炎を発症するメカニズムを探った。その結果、死菌刺激を受けたMPO欠損好中球やNOX2欠損マクロファージからの炎症性サイトカインの過剰産生が肺炎重篤化の一因であり、それらの過剰産生にはTLR2やTLR4受容体が関与し、NF-κBやSTAT3転写因子の過剰活性化がサイトカイン過剰産生の一因であることを示す結果を得た。さらに、NOX2欠損という自然免疫異常は、獲得免疫能の低下も招くという重要な知見も得た。
感染によって炎症が重篤化することは肺炎などでよく知られている。ところが、病原体が検出されないにも関わらず劇的なサイトカインストームを伴う重篤な炎症が進行することもあり、NOX2を欠損したヒトにおいてもそのような病態を時折発症することが知られている。しかし、その発症機構は不明なため治療法に乏しい。本研究は、原因不明の炎症性疾患発症における食細胞機能異常のリスクを知るという基礎研究としての意義がある。
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