研究課題/領域番号 |
20K06447
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42030:動物生命科学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
塚本 大輔 北里大学, 理学部, 助教 (50598836)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 冬眠 / 遺伝子発現制御 / 体温変動 / 肝臓 / シマリス |
研究開始時の研究の概要 |
冬眠哺乳動物シマリスの冬眠期は、5℃の冬眠と、37℃の中途覚醒を繰り返しているにも拘わらず全身の健全性が維持されている。近年、冬眠の制御は、非冬眠哺乳動物にも共通に存在する特定の遺伝子の発現様式を調整することで行われているのではないかと考えられるようになってきた。そこで本研究では、冬眠期の遺伝子発現は、冬眠-中途覚醒の体温変動を利用して非冬眠期の概日性の遺伝子発現制御機構を再調整することで制御されているというモデルを検証することから、肝臓が低温で健全な状態を保つ分子機構の解明を目指す。そして、移植医療用臓器不足の根本原因である、臓器保存技術の開発に貢献したい。
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研究実績の概要 |
「研究の背景」 哺乳類の冬眠は、冬眠哺乳動物に特異的な遺伝子やタンパク質が発見されていないことから、哺乳類に共通の遺伝子の発現や機能などを冬眠用に再調整することにより発動が制御されていると考えられている。申請者はこれまで、冬眠する小型哺乳類シマリスの肝臓における遺伝子の発現制御機構に着目し、冬眠期の転写調節には、非冬眠期と同様、ヒストン修飾の制御が関与していることや概日性の転写因子 HSF1 の活性が冬眠-中途覚醒サイクルに伴って制御されていることを明らかにしてきた。 「研究の目的」 本研究では、冬眠期の遺伝子発現は、冬眠-中途覚醒の体温変動を利用して非冬眠期の概日性の遺伝子発現制御機構を再調整することで制御されているというモデルを検証し、肝臓が低温で健全な状態を保つ分子機構の解明を目指している。 「研究実績」 昨年度までに、リファレンスデータが無いシマリスにおいて RNA-seq 解析のデータ解析環境を構築し、非冬眠期の活動時と休息時、冬眠期の深冬眠時と中途覚醒時のそれぞれ各3個体ずつ RNA-seq を行い、発現変動遺伝子の検出を試みてきた。しかし、野生動物シマリスは個体差が大きいせいなのか、同一状態と考えていたシマリス間でもバラつきが検出されたこともあり、データの信頼性を頑強なものにするため、当該年度では追加で各3個体ずつの RNA-seq 解析を行い、現在解析を進行しているところである。現時点ではまだ特徴的な遺伝子群は同定できていない。また、当該年度に、非冬眠期の概日性の体温変動により活性が制御される HSF1 の機構を冬眠期においても利用することにより、時計遺伝子 Per2 の発現が中途覚醒時に一過性に活性化されることを明らかにし、共著者として論文を1報発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英文雑誌1報、和文雑誌1報、そして学会発表と成果を報告するのに時間を要したため、新しい研究データを得る点において少し遅れが生じたが、研究の進展に大きな問題が生じているわけではない。シマリスの入手は安定してきたため、この点に関しては順調である。テレメトリーシステムを用いてシマリスの体温変動をリアルタイムで測定し、冬眠期の適切な体温変動時にサンプリングを行う計画が、テレメトリーシステム機械が完全に故障したため、その点は当初の計画と異なる状況になってしまった。テレメトリーシステムの代替策として、赤外線センサーシステムにより冬眠期の活動をリアルタイムでモニタリングして対応している。
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今後の研究の推進方策 |
冬眠期の低温耐性に関与する発現変動遺伝子群を明らかにしていくため、以下の研究を引き続き行う。 ① RNA-seq 結果の主成分分析による解析結果から、シマリスの状態による発現遺伝子群の違いだけでなく、シマリスが野生動物であることから、個体差も大きいことが明らかになった。そこで、追加でシマリスの状態毎に3個体ずつ RNA-seq 解析を行い、データが得られ次第、再度 in silico 解析を試み、より頑強な発現変動遺伝子を同定する。また、シマリスのゲノムに関する論文が2022年12月末に報告されたため、そのデータも利用する。
同時に、当該年度に論文発表した HSF1 による冬眠期の時計遺伝子の発現制御機構の解析結果から、非冬眠期は体温変動に伴って発現制御を受けていた遺伝子も冬眠期では体温変動以外の制御機構によって発現制御されている遺伝子があることが明らかになった。その結果をふまえ、個別の遺伝子の発現制御機構についても、以下の解析を引き続き行う。 ② 冬眠期の深冬眠-中途覚醒サイクルにおける Rbm3 遺伝子の発現制御機構、および Rbm3 の標的 RNA を網羅的解析結果を利用して探索し、その機能をエンリッチメント解析から推測する。そして、低温培養インキュベーターを購入できたため、最終的に、本研究で明らかにできた肝臓の低温耐性に関与する可能性のある遺伝子を、シマリスや非冬眠哺乳動物マウスの初代培養肝細胞、あるいは肝臓の培養細胞に過剰発現させ、低温培養下における細胞生存率を比較解析する。 以上の結果を論文とし報告することを目標とし、これらの研究から、シマリスの肝臓における冬眠期に特異的な遺伝子発現制御機構と低温耐性メカニズムの解明を目指す。
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