研究課題/領域番号 |
20K06473
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
菊地 元史 自治医科大学, 医学部, 教授 (60332988)
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研究分担者 |
早川 盛禎 自治医科大学, 医学部, 講師 (30326847)
高瀬 堅吉 自治医科大学, 医学部, 教授 (80381474)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ST2 / うつ様行動 / 神経免疫連関 / 行動実験 / 行動解析 / 抑うつ / 免疫 / 行動 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、抑うつ気分形成への免疫機能の関与を示唆する成果が頻々に報告されている。申請者らは、免疫関連タンパク質ST2を過剰発現するマウスの行動に、明瞭な抑うつ気分を見出した。 本研究では、このマウスの行動特性をさらに精到に解析した上で、ストレスに対する生理反応や視床下部-下垂体-副腎皮質系の機能を精査する。ST2は、IL-33を競合的に阻害することで免疫反応を修飾すると考えられている。ST2やIL-33受容体の脳内分布、遺伝子発現を解析することを通して、アレルギー疾患や急性炎症に関与するST2が、一方で個体行動に果たす役割を明らかにし、神経免疫連関という行動制御系解析のためのモデルとして提示したい。
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研究実績の概要 |
免疫関連タンパク質として知られるST2(37.1 kDaの分泌型タンパク質)を強制的に発現するトランスジェニックマウスに、うつ様の明確な行動変容が起こることを明らかとし、その機序を探求している。また、本マウスを新たなうつ病モデル動物として提唱しており、その生理学的、行動学的特性をさらに明らかにすることも本研究課題の目的である。前年度までに、1)生理学的解析:ST2の分泌を生理的に変動させる条件を探ること、2)薬理学的解析:ST2強制発現マウスのうつ様行動に対する抗うつ薬の効果を調べることを目指して研究を進めた結果、1)行動実験バッテリーによって、ST2強制発現マウスの行動特性は、慢性拘束ストレスを受けたマウスが示すうつ様行動と極めて類似していることが明らかとなった。そこで、正常マウスに2週間、日毎に拘束ストレスを与えたところ、血中ST2濃度が有意に上昇することが確認された。2)投与実験の結果、ST2強制発現マウスのうつ様行動にはSSRI、SNRIのいずれも効果がなく、モノアミン再取り込み阻害が無効な難治性うつ病のサブタイプであることが示唆された。 令和4年度においては、引き続き、1)について:血中ST2がどの臓器に由来するのかを明らかにするために、臓器毎のST2発現量の変化を明らかにすること、2)について:ST2は、IL-33の作用を阻害するタンパク質であることから、炎症反応への関与を示唆する先行研究に着目し、デキサメタゾン投与の効果を調べることを目指した。 その結果、1)新たに開発した定量的PCRを用いた解析により、ST2は、主に免疫諸器官で発現しており、慢性ストレスによって誘発される血中ST2は、脾臓に由来することが明らかとなった。2)ST2過剰発現マウスに全身性にデキサメタゾンを投与したところ、うつ様行動が抑えられることが判明した。神経免疫連関を示唆する一例と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題は、自家繁殖を行っているST2過剰発現マウスの利用を前提としている。研究期間中、新型コロナウイルス感染症対策のため、複数回に亘り繁殖を停止せざるを得ない状況が発生した。研究課題は、限られた数のマウスを、行動実験、生理学的実験、薬理学的実験にできる限りバランス良く振り分けることで、概ね当初の計画通り進んでいる。一方、実験の頻度は下げざるを得ず、進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
実験動物の数が確保できる環境になり次第、行動実験および生理実験を行い、これまでの成果を検証したい。また、今後補完すべき点として、1)慢性ストレスによって生理的にST2の発現が増加することに関して、視床下部ー下垂体ー副腎系関与の有無の検証、2)これまでの結果は、ST2発現と中枢での炎症反応の関係を示唆しているが、具体的部位の確認、が挙げられる。本年度が研究期間の最終であることから、この2点にテーマを絞り、精神免疫連関の概念の具現化に寄与したい。
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