研究課題
基盤研究(C)
我々は、世界に先駆けて終末糖化産物(AGEs)とその受容体RAGE(receptor for AGEs)の作用・機能を阻害する核酸アプタマーの開発に成功し、その効果を各種動物モデルで実証してきた。本研究は、当該アプタマーによって、老化が加速し寿命が著しく短縮する糖尿病マウスの各種老年病が包括的に制御され、寿命が延長するかどうかについて検討を行うものである。本研究により、当該アプタマーの有用性が示されれば、糖尿病と多岐にわたる老年病とをつなぐ共通の分子基盤が同定され、健康寿命を延伸させうる新しい治療手段が提示されることとなる。
終末糖化産物(AGEs)は糖化蛋白で、加齢や糖尿病によって促進的に形成され、AGEs受容体(RAGE)への結合を介して酸化ストレスや炎症を惹起し、糖尿病合併症の発症と進展に関わることが明らかとなりつつある。糖尿病では健康寿命・寿命共に短縮することが報告されているが、AGEs-RAGE系が関わっているかどうかは明らかではない。本研究では、寿命が著しく短縮する高脂肪食負荷の肥満糖尿病モデルマウスを用い、RAGEを阻害するDNAアプタマーを投与する事で、糖尿病性腎症が抑制されるとともに、生存期間の向上がみられることを明らかにした。
日本では、成人の6人に1人が糖尿病あるいはその予備軍であると報告されており、人口の高齢化によってこの割合はさらに増加していくと予想される。このため、糖尿病による寿命および健康寿命の短縮への対策は重要な問題である。DNAアプタマーは核酸医薬で、抗体医薬品に比べて安価で、大量に調整もできることから、次世代のバイオ医薬品として注目を集めている。DNAアプタマーを用いることで、これまでには不可能とされたAGEs-RAGE系の特異的な阻害を行うことが可能となった。本研究から、糖尿病における腎障害および寿命に対するRAGE阻害DNAアプタマーの有用性が示され、新たな治療法の開発につながると予想される。
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Int. J. Mol. Sci.
巻: 24 号: 7 ページ: 6505-6518
10.3390/ijms24076505