研究課題
基盤研究(C)
グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)は解糖系に必須の酵素であるが、酸化還元状態などの状況に応じて、異なる相手分子と臨機応変に相互作用し種々の異なる機能を発揮することが知られている。申請者は、いつもはホモ四量体であるGAPDHがサブユニット数も含む四次構造を変化させることによって多機能性を発揮しているのではないかと考え、その新たな概念としてのアロステリック効果をNMR, native-MS, AUC などの物理的計測法を用いて解明する。
解糖系の第6ステップとして機能するグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)は通常はその酵素機能に集中しているが、細胞が酸化ストレスにさらされると、核やミトコンドリアに移行してアポトーシスを引き起こす。その他、相互作用する分子が数十種類知られており、このように機能を変える蛋白質のひとつとして moon-lighting protein と呼ばれている。GAPDH が機能を変える仕組みとして、そのホモ四量体が開裂して二量体や単量体になることが示唆されているが、実際にそれが in-vitro で実証されているわけではない。そこで、筆者は溶液条件を変えても相互作用を容易に検出できる NMR を用いてこれを解析した。まず、過酸化水素などの酸化条件下におくと、立体構造が壊れ凝集が起こることが分かった。アポトーシスが開始される引き金として活性システイン残基のニトロシル化が報告されているが、筆者の NMR の結果では、ニトロシル化による構造の大きな変化は見られなかった。構造変化には、活性システイン残基だけでなく、その他いくつかの残基の酸化が同時に必要であると考えられる。また、補酵素である NAD を外すと変性温度が下がるなど非常に不安定になるが、還元剤を入れるなど慎重に扱えばホモ四量体は維持されたままであった。なお、ここに ATP を加えると低温変性が起こり、二量体や単量体が分析ゲル濾過で検出された。これは温度を上げると再び四量体に戻るなど可逆的であった。以上の結果は、相互作用時にサブユニットが開裂するかどうかの証拠を与えたわけではないが、細胞内には 5 mM もの豊富な ATP が存在することを考えると、ATP との相互作用が、GAPDH の構造平衡において別機能を引き起こすほどのモル比に偏らせるのではないかと考えている。
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