研究課題/領域番号 |
20K06522
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
武田 修一 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任助教 (50509081)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | アクチン / ATP加水分解 / 時分割結晶構造解析 / 細胞骨格 / X線結晶構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
アデノシン3リン酸 (ATP) は生体で最も普遍的なエネルギー貯蔵分子であり、その加水分解機構を原子構造レベルで理解することは極めて重要な課題である。真核生物の細胞骨格タンパク質アクチンは、繊維体への重合に伴い結合ATPを加水分解することで、ダイナミックな性質を示す。本研究では結晶中におけるアクチンATP加水分解を時分割X線構造解析で捉え、その反応過程を活写することを目標とする。
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研究実績の概要 |
アクチン繊維は、ATP加水分解によってダイナミックに重合・脱重合を繰り返すことで、細胞運動の駆動力を産む。繊維中のアクチン分子は単量体とは異なるF(filament)型コンフォメーションを取り(Oda, Nature, 2009)、ATP加水分解はF型アクチンのみで起こる。近年のクライオ電子顕微鏡技術の発展によって、3.1オングストローム分解能のアクチン繊維構造が報告されている(Merino, Nat Struct Mol Biol, 2018; Chou, PNAS, 2019)。しかしこれらの“近原子分解能”構造では、加水分解反応の肝である水分子は同定できない。タンパク質中の水分子位置の判別にはX線結晶構造解析が適しているが、その不定長の繊維に会合する性質ゆえ、これまでアクチン繊維の単結晶化は不可能であった。申請者は最近アクチン結合タンパク質との共結晶化によって、F型アクチンの高分解能結晶構造を決定することに成功した。本研究ではこの系を用いて、時分割X線結晶構造解析法によってアクチンATP加水分解を結晶中で捉えることを目標とする。ATPは生体内で最も普遍的に利用されているエネルギー通貨であり、その加水分解反応機構の解明はアクチン研究分野に留まらず、物質代謝や核酸合成など、細胞内で起こるATPをエネルギー源とする化学反応全般を理解する上で非常に重要である。本年度においては、フラグミンF1ドメインの溶液中における活性の詳細、アクチンとの結合アフィニティやヌクレオチド交換促進能、ATP加水分解活性を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究業績の概要に示したように、本年度において、時分割X線結晶構造解析を行う上で重要な情報を与える、フラグミンF1ドメインの溶液中におけるアクチンATP加水分解活性に対する影響の詳細を測定した。イプシロンATPを用い、F1との複合体中のアクチンは結合ヌクレオチドを容易に交換することを示した。等温滴定型カロリメトリー(ITC)測定で、F1がアクチンとnM以下の解離定数で強固に結合することを見出した。しかし、高速液体クロマトグラフ法により、F1と結合したアクチンのATP加水分解速度は0.001 s-1以下であり、アクチン繊維中のサブユニットの加水分解速度(0.3 s-1)よりもかなり遅いことがわかった。これらの結果は溶液中に置いてF1と結合したアクチンは常に加水分解可能な繊維型コンフォメーションを取らないことを示唆する。これらの実験に当初予定していたよりも時間を費やすことになったため、時分割X線結晶構造解析を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の目標としてアクチン結晶中でのATP加水分解を時分割X線結晶構造解析法を用いて測定する
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