研究課題/領域番号 |
20K06561
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
出嶋 克史 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (60457439)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | C. elegans / 全身性RNAi / 亜鉛 / 亜鉛輸送体 / RNAi / 小胞輸送 / dsRNA |
研究開始時の研究の概要 |
機能的なRNAが細胞間を伝播し、細胞非自律的に遺伝子の発現調節を担うことが知られるようになり、新たな細胞間情報伝達機構として注目されている。しかし、細胞外の機能的なRNAが細胞間を伝播する分子機序について十分な解明をみない。線虫C. elegansにおいては、高等生物における機能的なRNAの標的細胞への伝播と類似した「全身性RNAi」という現象が知られる。これまでに、「全身性RNAi」に着目することで、機能的なRNAの取り込みの負の制御に亜鉛が関与することを見出してきた。本研究では、亜鉛の標的となる分子の解析を行い、亜鉛を介した機能的なRNAの細胞間伝搬機構の理解を目指す。
|
研究実績の概要 |
二本鎖RNAやマイクロRNAなどの機能的なRNAは、対象のRNAの塩基配列に特異的に作用し、遺伝子の発現調節を行う。特に、二本鎖RNAはRNA干渉(RNAi)によって対象のRNAを分解することができることが知られている。これらの機能的なRNAは基本的に細胞内で機能するが、一部は細胞外に放出され、近隣の細胞や遠隔の細胞に取り込まれ、細胞非自律的に遺伝子発現を抑制することができる。このため、機能的なRNAは、疾患の原因となる遺伝子の発現を抑える目的で、核酸医療薬としての応用が期待される。 しかしながら、細胞外の機能的なRNAが細胞間を伝播する分子機序についての理解は乏しい。線虫C. elegansにおいては、高等生物における機能的なRNAの標的細胞への伝播と類似する現象として「全身性RNAi」という現象が知られる。これまでに、「全身性RNAi」に着目することで、ある種の亜鉛輸送体や亜鉛が機能的なRNAの取り込みを負に調節することを見出してきた。本研究では、亜鉛の標的となる分子の探索と解析を行い、亜鉛を介した機能的なRNAの細胞間伝播メカニズムの理解を目指している。これまでに、同定した新規全身性RNAi関与因子の基本的な特徴(遺伝子発現パターンや、細胞内局在パターン、遺伝子ノックアウト時の表現型など)についてのデータを取得してきた。また、この分子と既知の全身性RNAi関与因子との遺伝学的な関係性も明らかにしている。加えて、この分子の機能阻害により亜鉛代謝に影響が生じる点や、亜鉛輸送活性を持たないと考えられるフォームではレスキュー活性を示さないことなどを見出している。今年度は、RNA依存的RNAポリメラーゼの機能に着目した解析を行なった。また、これらの研究結果を補強するデータを取得し、論文化を目指した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、線虫C. elegansにおいて亜鉛輸送体の一つが全身性RNAiに関与することを明らかにしている。候補遺伝子スクリーニングで亜鉛によって制御をうける可能性のある分子のうち、全身性RNAiを正に制御する遺伝子及び、負に制御する候補遺伝子複数見出している。負に制御する候補遺伝子の変異体と亜鉛輸送体の二重変異体を作成し、全身性RNAiの効率を比較した。興味深いことに、これらのうちの一つの転写因子様分子をコードする遺伝子の変異体が亜鉛輸送体のRNAi亢進表現型を更に増強させたことから、亜鉛輸送体と協調または並行して全身性RNAiを負に制御する可能性が示唆された。この転写因子様分子をGFPを融合させたコンストラクトを有するトランスジェニック線虫を線虫ストックセンターから取り寄せ発現を調べたところ、全身で発現していることが分かった。興味深いことに、この転写因子様分子が低温高音ストレス時におけるリボソームRNAおよび翻訳制御に関わることが報告された。従って、亜鉛を介した全身性RNAiの一つの作用点は翻訳調節である可能性がある。しかし、亜鉛添加の実験などではすでに同定している亜鉛輸送体との関係性について十分な関連性を示すことができていなかった。そこで、この転写因子様分子の関連については、別のメカニズムとして記述することにし、それ以外の部分を論文化するべくすでに得た結果を補強するデータの取得を行い、論文を作成した。他方、RNA依存的RNAポリメラーゼ(RdRP)が亜鉛により制御される可能性を疑い、その変異体の解析も並行して行なった。
|
今後の研究の推進方策 |
同定している亜鉛輸送体が輸送する亜鉛の標的が何かという点については依然として明らかではないが、亜鉛輸送体と協調または並行して全身性RNAiを負に制御する可能性のある転写因子様分子を見出した。それ以外にもエンドサイトーシスに関わる亜鉛関連因子の同定にも成功している。加えて、RdRPの新規変異は機能獲得型であることを見出しており、今後は、これらの個別の論文や学会発表で公の場で発表することをを目指す。
|