研究課題/領域番号 |
20K06589
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
千住 洋介 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 研究准教授 (90536848)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 生体膜 / 細胞骨格 / 分子進化 / 真核生物起源 / 構造生物学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、アスガルド古細菌の新規アクチン調節タンパク質とイノシトールリン脂質の複合体の立体構造を解き、生物物理的手法と細胞生物学を組み合わせてその制御機構を解明する。そして、進化の過程を通して、イノシトールリン脂質による細胞膜とアクチン調節タンパク質との結合が、アクチン重合のような下流のシグナルを誘起し、細胞の形態形成と生命活動の維持に重要であることを示す。
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研究実績の概要 |
研究の目的 細胞は、細胞膜によって外界と区画されることで生命の基本単位として定義される。細胞膜の形態変化は、がん細胞の浸潤、転移などに見られる細胞運動や細胞分裂、分化などの生命活動に伴う必須のメカニズムである。細胞膜は、イノシトールリン脂質などの脂質分子によって二重層を構成し、細胞膜の形態は細胞骨格によって支えられている。 最近、真核生物に近い系統と考えられているアスガルドと命名された新規アーキアのメタゲノム解析によるゲノムの再構築から、真核生物に相同性を持つタンパク質をコードする遺伝子が発見された。その中には、これまで原核生物には存在しないとされてきた細胞骨格アクチン、アクチン重合の制御因子のホモログが含まれている。そこで本研究の目的は、PI(4,5)P2による、アスガルドアーキアに見出された新規アクチン調節タンパク質の制御機構を解明することである。
研究の成果 [Step1] アスガルドアーキアに見出されたアクチン調節タンパク質の人工遺伝子合成をした。[Step2] タンパク質の発現・精製をした。[Step3] 緑色蛍光タンパク質 (GFP) などを融合したアスガルドアーキアのアクチン調節タンパク質をヒト培養細胞で発現させ、どのような細胞内構造に局在するか明らかにした。また、アスガルドアーキアのタンパク質に対する抗体 (ナノボディ) を作製した。光-電子相関顕微鏡法(CLEM)を用いてタンパク質の局在を蛍光顕微鏡で同定し、その形態を電子顕微鏡で微細観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
[Step1] アスガルドアーキアに見出されたアクチン調節タンパク質の人工遺伝子合成をした。 [Step2] タンパク質の発現・精製をした。 [Step3] 緑色蛍光タンパク質 (GFP) などを融合したアスガルドアーキアのアクチン調節タンパク質をヒト培養細胞で発現させ、機能発現とどのような細胞内構造に局在するか明らかにした。また、アスガルドアーキアのタンパク質に対する抗体 (ナノボディ) を作製した。
光-電子相関顕微鏡法(CLEM)を用いてタンパク質の局在を蛍光顕微鏡で同定し、その形態を電子顕微鏡で微細観察したが、高い空間分解能を得るには至っていない。また、質量分析 (MS) を用いてアスガルドアーキアのタンパク質の相互作用分子をヒト培養細胞で同定しているが、偽陽性が含まれている。
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今後の研究の推進方策 |
[Step1] 精製したタンパク質がPI(4,5)P2に結合するか、リポソーム共沈法を用いて明らかにする。また、蛍光色素であるDPH (1,6-diphenyl-1,3,5-hexatriene) をリポソームに加えて、蛍光異方性を分光蛍光光度計で測定する。 [Step2] 精製したタンパク質を蛍光標識し、巨大脂質膜リポソーム (GUV: Giant Unilamellar Vesicle) に作用させることで、PI(4,5)P2を含んだ脂質膜に結合するか明らかにする。また、光褪色後蛍光回復法 (FRAP: fluorescence recovery after photobleaching) を用いて、タンパク質の細胞膜上でのダイナミクス、側方拡散係数、解離定数(Kd)を定量的に求め、PI(4,5)P2との結合の安定性を明らかにする。 [Step3] 光-電子相関顕微鏡法(CLEM)を用いてタンパク質の局在を蛍光顕微鏡で同定し、その形態を電子顕微鏡で微細観察し、高い空間分解能を得る。また、質量分析 (MS) を用い、偽陽性を排除して、アスガルドアーキアのタンパク質の相互作用分子をヒト培養細胞で同定する。
生物物理学、生化学、細胞生物学を組み合わせて機能を明らかにすることで、アクチン重合に代表される生命システムがどのように進化してきたかを解明する。そして、進化の過程を通して、PI(4,5)P2による細胞膜とアクチン調節タンパク質との結合が、アクチン重合のような下流のシグナルを誘起し、細胞の形態形成と生命活動の維持に重要であることを示す。
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