研究課題/領域番号 |
20K06642
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
祐村 恵彦 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (70183986)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | wound repair / cell membrane / intracellular signaling / actin / cytoskeleton / actin cytoskeleton / 細胞膜 / 損傷治癒 / アクチン / Caイオン / カルモジュリン / シグナル伝達 / ミオシン / 損傷 |
研究開始時の研究の概要 |
外界の物理的・化学的ストレスによって,細胞膜の損傷はしばしば起こる。細胞膜は速やかに修復しなければ細胞成分が外に出て最終的に細胞は死ぬ。人における細胞膜修復機構の欠損は,多くの疾病の原因となっている。本研究では,独自に開発した,細胞膜のみに正確な大きさの穴をあけるレーザーポレーション法をさらに改良しつつ,細胞膜に穿孔損傷を与え,その修復過程に形成される修復装置の分子構成,構造,シグナル制御機構を明らかにし,細胞膜修復機構の全体像を明らかにする。これらの研究成果は,関連疾病の治療に役立つだけでなく,高効率な細胞内への外来物質導入装置の開発にもつながると考えている。
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研究実績の概要 |
我々は日常的に皮膚の怪我など,組織レベルでの損傷が自発的に治癒することを経験しているが,細胞レベルでも細胞膜の損傷を修復する機構が存在する。実際,外界の物理的・化学的ストレ スによって,細胞膜の損傷はしばしば起こる。細胞膜は外界環境から細胞を守るとともに,細胞内の環境を維持しており,速やかに修復しなければ細胞成分が外 に出て最終的に細胞は死ぬことになる。人における細胞膜修復機構の欠損は,筋ジストロフィー,パーキンソン病など多くの疾病の原因となっている。また,人為的に細胞膜に穴を開けてDNAなどの物 質を導入するマイクロインジェクション法などの技術も,細胞の持つこの修復機構に依存している。本研究では,独自に開発した,細胞膜のみに正確な大きさの 穴をあけることのできるレーザーポレーション法を開発改良しつつ,細胞膜に穿孔損傷を与え,その修復過程に形成される修復装置の分子構成,構造,シグナル 制御機構を明らかにし,細胞膜修復機構の全体像を明らかにすることを最終目的にしている。これらの研究成果は,関連疾病の治療に役立つだけでなく,高効率 な細胞内への外来物質導入装置の開発にもつながる。現在までに,レーザーポレーション装置を改良し細胞膜に直径0.5マイクロメートルの穴を開けて損傷を与え,治癒過程を経時的に観察し,損傷部へのアクチン細胞骨格の集積が損傷治癒に必須であることを明らかにしてきている。本年度はアクチンの集積機構やそのシグ ナル機構を明らかにするため,アクチン結合タンパク質,シグナルタンパク質などを網羅的に損傷部に集積するか調べ,治癒に必要なタンパク質候補を明らかにするとともに,それらの集積の時経列についてさらに明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 コロナ禍で,いくつかの計画は遅れている。これまでの研究で,損傷部へのアクチンの集積に関与するアクチン結合タンパク質やシグナルタンパク質の候補は上 がってきたが,まだ可能性のある候補がいる可能性を残している。また,装置の改良はある程度は満足できるものができたが,将来の市販化を考えてさらに改良 が必要である。今までの結果を論文にまとめる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
従来,カエル卵やショウジョウバエの胚のように,ミオシンがアクチンとともに損傷部で収縮環様の構造を作り収縮することで,損傷部の穴が閉じると報告され てきたが,少なくとも細胞性粘菌ではミオシンは損傷部から消失することが申請者の研究で明らかになった。上記の卵や胚とは異なるメカニズムであることが示 唆される。本研究により,細胞膜が損傷時に細胞外からのCaイオンの流入がトリガーになって,カルモジュリンなどが関与することが明らかになってきた。シグナルの最下流にアクチンの集積があると考えられるが,どのアクチンの制御タンパク質が関与するのか,またカルモジュリンを含めアクチンの集積の動態を制御するシグナルカスケードの全貌を今後明らかにしていきたい。コロナ禍で,計画していた急速凍結による電子顕微鏡観察の研究が滞っているが,その分多くの種類の分子の動態を観察する時間に当てるようにしたい。また,成果内容をまとめて論文にして報告する予定である。
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