研究課題/領域番号 |
20K06720
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
日下部 誠 静岡大学, 理学部, 教授 (40451893)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | イトヨ / エラ / 腸 / ナトリウムクロライド共輸送体 / 重炭酸ナトリウム共輸送体 / カルシウム / マグネシウム / 陸封型イトヨ / Na+-Cl-共輸送体 / 海水適応能 / 塩類細胞 / 真骨魚類 / イオン輸送体 / 両生類 / ウシガエル / 腎臓 / 浸透圧調節 / 多様化 / 鰓 / イオン輸送体・チャネル |
研究開始時の研究の概要 |
水棲生物が持つ様々な塩分環境に適応する能力(浸透圧調節能)は、生息域の拡大を可能とさせ、種の繁栄に強い影響力を持つ。魚類では、同じ種内で優れた浸透圧調節能を有する集団とそうでない集団が存在する。同じ種内で浸透圧調節能が多様化することの利点は何だろうか? これまでの研究より、異種間での浸透圧調節能の違いに関する知見は蓄積されてきたが、同種内で浸透圧調節能が多様化するメカニズムについては殆ど分かっていない。そこで本研究では、広塩性魚類のイトヨを用いて、浸透圧調節に関わる候補遺伝子について、ゲノムワイドな解析およびエンハンサー領域の解析を行い、浸透圧調節能が多様化するメカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、広塩性魚のイトヨを用いて、同種内で浸透圧調節能が多様化する遺伝機構と生理的意義についての解析を進めている。福井県大野市のイトヨ(大野イトヨ)と岐阜県大垣市のハリヨ(岐阜ハリヨ)は、ほぼ同時期に陸封化した集団である。ところが、大野イトヨは海水に問題なく適応できるのに対して、岐阜ハリヨの海水適応能力は極めて低い。大野イトヨと岐阜ハリヨの浸透圧調節メカニズムを比較することにより、浸透圧調節能が多様化するメカニズムの解析を進めている。エラにおける浸透圧調節メカニズムに焦点を当て解析を進めてきたが、イトヨの浸透圧調節能の多様化についてエラのみで説明できないことがあることが分かってきた。そこで、エラに加えて腸の解析も行い、エラと消化管における浸透圧調節メカニズムの解明を試みた。環境塩分濃度が体液の浸透圧よりも高い状態になると、大野イトヨのエラでは、ナトリウムクロライド共輸送体様(NCC-like)の遺伝子が急激な上昇をしめす。それに対して、岐阜ハリヨでは、軽微なNCC-like遺伝子の発現上昇しか認められない。しかしながら、NCC-like遺伝子の発現変化は一過的なものだった。そこで腸の解析を進めた結果、大野イトヨの腸に存在する重炭酸ナトリウム共輸送体(NBC)遺伝子の発現が岐阜ハリヨに比べて恒常的に高いことが分かった。イトヨは、腸内への重炭酸イオンの排出を制御することによって、海水環境において腸内に蓄積するカルシウムやマグネシウムなどの2価イオンを排出していることが示唆された。これまでの結果より、イトヨにおける海水適応は、エラによる短期的な塩分排出と腸による長期的な2価イオン排出によって制御されていることが示唆された。イトヨの浸透圧調節能の多様化はNCC-likeやNBCの発現量の違いが鍵になっているかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を開始した2020年度に発生したCOVID-19の影響により、初年度の研究立ち上げの段階で生じた研究の遅れが、研究のまとめと位置付けていた2022年度において大きく影響した。また、当初、イトヨの浸透圧調節の多様性をエラの解析のみで解析を進めることを予定していたが、エラの解析から得られた情報だけでは長期的に体液浸透圧を一定に維持することができないことが分かってきた。そこで、研究計画には入れていなかった腸の解析を加えたことにより年次計画からの遅れが生じた。しかしながら、腸を解析に加えたことにより、イトヨにおける浸透圧調節の全体像が見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響による研究の遅れから、研究期間を1年延長した。最終年度は、以下の3点について研究を進める。(1)イトヨのエラのNCC-likeと腸のNBCについて、イオン輸送体としての機能を解析する。イトヨのNCC-likeとNBCの抗体を作成し、免疫組織染色法を用いて、それぞれが発現する細胞を同定し、その発現動態を解析する。(2)2021年度、海水馴致した大野イトヨと岐阜ハリヨのエラを用いたRNA-seqおよびATAC-seq解析を実施した。ATAC-seqの解析に関して、これまで魚類の浸透圧調節に関わる代表的なイオン輸送体やチャネルの発現変化がエピジェネティックな制御の影響を受けているかについて解析を進めてきた。しかしながら、オープンクロマチン領域の分布の違いがイオン輸送体やチャネルの発現を制御しているという明確な結果は得られなかった。そこで、RNA-seqから得られる大野イトヨと岐阜ハリヨにおいて大きく発現量が異なる遺伝子をリストアップする。発現量が大きく異なる遺伝子について、オープンクロマチン領域の分布が異なる遺伝子のリストを作成する。この解析により、エピジェネティックな制御を受ける浸透圧調節因子の同定をする。(3)海水馴致実験を施した大野イトヨと岐阜ハリヨの腎臓における浸透圧調節メカニズムの解析を進める。2021年度に実施したエラの解析結果、2022年度に実施した腸の解析結果と合わせて、イトヨの浸透圧調節メカニズムの全体像の解明を目指す。上記の(1)(2)(3)の解析をまとめることにより、イトヨにおける浸透圧調節能の多様化のメカニズムを明らかにする。
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