研究課題/領域番号 |
20K06724
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
大瀧 丈二 琉球大学, 理学部, 教授 (70360211)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 色模様形成 / 翅形成 / チョウ / リアルタイムイメージング |
研究開始時の研究の概要 |
以下の5点について研究する。(1) 翅の外形(輪郭)決定過程を詳細に記載する。(2) 翅細胞の形態の経時変化と物理的な歪みおよび張力の作用との関係を検討し、上皮シートの歪みや張力が色模様形成を含めた翅の形態形成に果たしている役割を示す。(3) 細胞同士の横方向のコミュニケーションにサイトニーム(神経細胞の樹状突起や軸索に似た上皮細胞の長い突起)とエキソソーム(細胞外に分泌される封入体)がかかわっている可能性を明確に示す。 (4) 翅全体に走るカルシウム波を捉える。 (5) 生きた翅組織への蛍光抗体導入法を確立する。これにより、タンパク質レベルのノックダウン系を確立し、将来の機能解析につなげる。
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研究実績の概要 |
チョウの翅の色模様形成のメカニズムはまだよくわかっていない。翅形成過程も含めて、さまざまな視点からこの問題にアプローチするのが本研究である。その根幹となっているのが、共焦点顕微鏡を用いたリアルタイム・インビボ観察である。当初はリアルタイム・インビボ観察により翅組織における細胞形態分布を記録することで「歪み仮説」の検証をする予定であったが、期待するデータは得られなかったため、この仮説の検証は別の視点から次年度に行うつもりである。ただし、いわば副産物として、翅組織とクチクラの結合が重要な役割を果たしていることがわかった。 一方、翅組織にある試薬を導入することで色模様が変化することを発見した。この試薬の動態を共焦点顕微鏡で追跡することで、クチクラに作用していることを示唆することができた。また、翅組織に抗体等の蛋白質を直接導入する方法を確立した。これにより、色模様形成に関与すると思われる蛋白質を、ゲノム編集技術等に依存することなく、直接的に機能阻害することができると思われる。 さらに、クチクラを形成するキチンに結合する蛍光色素を用いて、細胞外だけでなく、細胞内におけるキチンの存在を明らかにすることができた。キチンはチョウの翅形成の際に必須となる鱗粉およびソケットの形成において必須であるため、細胞内においてもキチンによって特殊な構造体が作られている可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上皮シートの歪みや張力については、当初の予定よりも期待するデータを得ることが難しく、視点を変えて別のアプローチをすることとした。そのため、これについてはやや進展が遅れているが、重要な副産物として、翅組織とクチクラとの結合が重要な役割を果たしていることを突き止めた。一方、蛋白質導入系の確立については、順調に研究が進み、当初の予定よりも進行している。よって、プロジェクト全体としては、おおむね順調に進展していると言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で確立された蛋白質導入法を用いて、色模様形成において重要な機能を果たしていると考えられている蛋白質分子に対する抗体を翅組織に導入することを試みる。細胞内キチン構造体については論文化することを試みる。翅組織の歪みや張力については、これまでの研究で翅組織のクチクラへの結合が重要であることがわかったため、結合状態をイメージングすることを試みる。さらに、損傷実験や薬理学的阻害実験を行い、色模様形成シグナルの動態を推察する。
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