研究課題/領域番号 |
20K06742
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岡田 二郎 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (10284481)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | シンクロ現象 / ウェービング / チゴガニ / 個体間コミュニケーション / 同調行動 |
研究開始時の研究の概要 |
干潟に生息するカニのなかには、繁殖期になるとオスがハサミを繰り返し振り上げる「ウェービング」とよばれる行動を盛んに行う種がいる。日本の河口干潟でしばしば見られるチゴガニは、そのウェービングのリズムが近隣個体同士で良く同期(シンクロ)する。本研究では、行動観察および生理実験からチゴガニのオス個体間における視覚信号を介した相互作用について調べ、ここから導き出されるウェービングのシンクロ現象のメカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
広く日本の河口干潟に生息するチゴガニは、繁殖期を含む5月から8月までの期間、オス個体が鉗脚(ハサミ)を繰り返し振り上げるウェービングを盛んに行う。ウェービングは、メスへの求愛であるとともにライバルへの誇示であるとされ、近隣個体同士でそのリズムが良く同期(シンクロ)する。本研究では、行動観察および生理実験を通じて、チゴガニのオス個体間における視覚信号を介した相互作用の基本ルールを解明し、ここから導き出されるウェービングのシンクロ現象のメカニズムを明らかにすることを目的とする。 令和5年度は、カニ集団中に設置したロボットを0.91~1.43Hzの頻度で稼働させ、全体的なウェービング活性に及ぼす効果について解析を行った。カニ集団はロボットが特定の頻度(0.91~1.11Hz)で稼働すると、ロボットに追随してウェービングする傾向を示した。また、集団的ウェービングに対するロボットの効果は、ロボット稼働前のウェービング活性に依存する傾向が認められ、ロボット稼働前のウェービング活性が比較的低い場合にはペースメーカー的な役割をもつが、ロボット稼働前のウェービング活性が比較的高い場合には抑制的作用を示した。 ウェービング遂行時のハサミ運動筋の筋電位記録および心脈波記録については、ウェービング自体がまったく起こらず、データは得られなかった。ただし、侵襲ストレスがより少ない心脈波記録については、ストレス源となりうる化学物質(人工甘味料)への暴露により心拍間隔のゆらぎの程度が減少するという結果が別途行った実験で得られ、昨年の成果(各種行動と心拍ゆらぎの間の関連性の発見)と同様に、心拍ゆらぎがカニのストレス指標になりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本課題は、①ロボットを用いたウェービング時の個体間相互作用の解析、②カニ集団中に設置したロボットがウェービングに及ぼす効果、③ハサミ運動筋の筋電位および心臓活動から探るシンクロ・ウェービングの生成メカニズム、の3つのサブテーマからなるが、最も核心的な位置づけである③においてこれまでほとんど成果が得られていない。したがって令和6年度も本研究を期間延長して継続し、以下に示す推進方策に則り、ウェービング遂行時のハサミ運動筋の筋電位および心脈波の記録に挑戦する。
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今後の研究の推進方策 |
最終となる令和6年度では、特に遅延している「ロボットを用いたウェービング時の個体間相互作用の解析」および「ハサミ運動筋の筋電位とシンクロ・ウェービングの関係」について、実施時期を限定せず、同時進行で進める。令和6年度は協力者にも比較的恵まれており、前者についてはある程度着実に進められるものと考えている。一方、後者については上述のように極めて困難な状況にあるが、当初計画通りチゴガニでの記録を試みると同時に、ウェービングを行う別種のカニも用いる。これは、現在使用している有線での記録システムがカニの行動を物理的に制限している可能性があるためである。新たに無線記録システムの開発に着手し、これをチゴガニ(甲幅約10mm)より大型のハクセンシオマネキ(甲幅約20mm)に搭載して記録に挑戦する予定である。
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