研究課題/領域番号 |
20K06756
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45010:遺伝学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田辺 真彦 東京大学, 医学部附属病院, 病院教授 (30572333)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 乳癌 / エストロゲン / H2A.Z / H2A.X / エストロゲン受容体 / エピゲノム / 相同組み換え修復 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、乳癌のエストロゲン依存性に着目し環境要因依存的な乳癌発生分子機構の解明を目指す。環境要因の多くは、紫外線、毒性の強い薬剤、発癌性物質などでない限り、遺伝子変異の直接の原因となるほどの力はない。しかしながら、環境要因は、生体内のホルモン環境に影響を及ぼし、標的遺伝子群の発現を変動させることが可能である。このような標的遺伝子群の発現は、遺伝子発現制御領域で制御されている。従って、環境要因の影響を直接受けた遺伝子群では、「その証拠」が遺伝子発現制御領域上に書き記されているはずである。そこで本研究では、遺伝子発現制御領域上に「上書きされた」エピゲノム変化に着目し、これを発見したいと考えた。
|
研究実績の概要 |
エストロゲン刺激依存的乳癌発生分子機構の解明にあたり、ERα標的遺伝子の中でH2A.Z, H2A.Xの双方が遺伝子プロモーター領域に存在する遺伝子群の絞り込みを行った。この中には、BRCA1/2以外で遺伝性乳癌と関連することが報告され、DNA2本鎖損傷の相同組み換え修復に関わる遺伝子群が含まれていた。このため、DNA2本鎖相同組み換え修復に関わる遺伝子群(BRCA1/2に加え、PALB2, CHEK2, BARD1, ATM, RAD51C, RAD51D)の発現が、エストロゲン刺激依存的に変動するかどうかを評価することとした。月経サイクルのような 周期的エストロゲン刺激が、乳癌の易罹患性に関わる遺伝子群をエピゲノムレベルで制御していることが明らかとなれば、乳癌発生分子機構の一端が明らかになる可能性がある。また、エピゲノムレベルでBRCA1/2およびPALB2, CHEK2, BARD1, ATM, RAD51C, RAD51Dの発現が抑制されていることがDNA2本鎖損傷の相同組み換え修復不全に直結しているとすれば、体細胞レベルでhomologous recombination deficiency (HRD)を直接評価することの意義が高まる。 そこで乳癌培養細胞株MCF7を用いて、エストロゲン刺激および枯渇条件下において相同組み換え修復にかかわる遺伝子の発現に変化を認めるか、ウエスタンブロッティングを用いて検討した。48時間のエストロゲン刺激やエストロゲン枯渇状態では発現タンパク質量に変化をうかがわせるデータは出なかった。さらに長く8日間のエストロゲン刺激状態、エストロゲン枯渇状態さらにエストロゲン枯渇と刺激を繰り返すサイクルとういった条件で検討したところ、ウエスタンブロッティングのバンドで一部のタンパク質発現が変化している可能性があるデータを得た。この再現性を得るために同様の実験を繰り返したが、エストロゲン刺激に応じて発現が低下するDNA2本鎖損傷の相同組み換え修復因子群は明らかとはならなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
BRCA1/2に加え、PALB2, CHEK2, BARD1, ATM, RAD51C, RAD51Dのエストロゲン刺激依存的タンパク質発現変動を安定して評価できるまでに時間を要した。また、エストロゲン刺激の有無によるDNA2本鎖損傷修復に関わるタンパク質群の発現変動は予測していたよりも小さいものであり、かつ、再現性も得られなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画のスタートラインに戻り、エストロゲン刺激依存的乳癌発生分子機構の解明にあたって、ERα標的遺伝子の中でH2A.Z, H2A.Xの双方が遺伝子プロモーター領域に存在する遺伝子群のうち、DNA2本鎖損傷の相同組み換え修復に関わる遺伝子以外にターゲットを広げることとした。
|