研究課題/領域番号 |
20K06796
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 博俊 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (10635494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 生物地理 / 地域固有性 / 菌根共生 / 宿主選好性 / 熱帯 / 菌類 / 外生菌根 / 宿主特異性 / 分散制限 / 共生 / 全球分布 / 熱帯林 / 外生菌根菌 / 分散 / DNAバーコーディング / 微生物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、外生菌根菌の分布を制限する要因を明らかにするため、東南アジア熱帯地域の山地林と低地林に見られる外生菌根菌の分布パターンを調べる。本研究の計画は、3つの過程に分けられる。まず、①東南アジア熱帯の山地林と低地林に生育する外生菌根菌の採集である。次に行うのが、②採集した外生菌根菌サンプルのバーコード領域の解読と、国際塩基配列データベースへの照合である。最終的に、③採集地の外生菌根菌群集が地球上のどの地域と類似するかを推定する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、東南アジア熱帯林に生育する外生菌根菌を対象として、その地域固有性を生み出す要因を解明することを目的としている。本年度は、マレーシアサラワク州のランビルヒルズ国立公園の低地フタバガキ林において採取した外生菌根菌を対象に、独自に設計した分布推定モデルを用いることによって、地域固有性を評価すると同時に、地域固有性に寄与する要因を推定した。まず、調査地で採取した外生菌根菌について、菌類のバーコード配列(核ITS領域)を解読した後、塩基配列データベースにおいて同じ操作分類群(OTU、近似的な種)の菌がどの国に分布しているかを調べた。その後、二段階二項分布モデルを用いて、調査地で見つかった外生菌根菌の操作分類群(OTU)が存在する確率を国ごとに推定する(ロジスティック回帰を使用)と同時に、菌類のバーコード配列の登録確率を国ごとに推定した(ベータ分布を使用)。ロジスティック回帰の結果、外生菌根菌の存在確率はフタバガキ科の種数が多く、調査地に近い国ほど顕著に高くなることが示された。また、存在確率が高い国は、マレーシアとインドネシアなどの近隣の東南アジア諸国のみに限定されたことから、低地フタバガキ林における外生菌根菌の地域固有性は極めて高いことが示された。以上の結果から、1)低地フタバガキ林の外生菌根菌はフタバガキ科樹種に対して強い宿主選好性をもつためにフタバガキ科樹種の多い地域にしか進出できないこと、および、2)分散制限が入れ子要因として働くことで潜在的に進出可能な地域(低地フタバガキ林)の中での分布パターン(距離減衰パターン)が決まることが分かってきた。これらの結果について学術論文としてまとめ、投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度では東南アジア熱帯低地林の外生菌根菌について分布パターンを推定したが、当初の予定では熱帯山地林の外生菌根菌の分布パターンについても推定結果を得る予定であった。しかしながら、熱帯山地林における調査許可が年度内に得られなかったために、研究期間を延長することとなった。翌年度の夏には熱帯山地林の調査許可を得られる見込みであるため、現在その準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、サラワク州の熱帯山地林であるプロン・タウ国立公園において、ブナ科樹種の根系を採取し、得られた外生菌根菌の全球分布パターンを推定することを予定している。プロン・タウ国立公園における調査は、2024年度の8月ごろを予定している。その後、サラワク州クチン市の研究施設において、得られた外生菌根サンプルに対して、イルミナMiSeqを用いて、菌類のバーコード配列(ITS領域)の塩基配列を解読する。得られた配列と同じ操作分類群(OTU)を塩基配列データベース上で探索した後、低地フタバガキ林と同じ分布推定モデリングを使って、調査地で見つかった操作分類群が存在する確率をすべての国に対して推定する。得られる結果は低地フタバガキ林の結果と異なることが予想され、ブナ科樹種の分布が存在確率に強く寄与し、山地林として孤立しているためにより強い分散制限が検出されることが予想される。得られた結果については、学術論文としてまとめ、投稿する予定である。
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