研究課題/領域番号 |
20K06799
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
田邊 力 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30372220)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 擬態 / ヤスデ / ハエ / 警告色 / 寄生 / 自然選択 / 進化 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らが発見したヤスデ類のミュラー型擬態の系は、灰色擬態環の形成から、その消失及びオレンジ擬態環への移行といった特異な進化パターンを示す。本研究では、この特異な系を対象に、ハエ類捕食寄生(擬態のコスト)と鳥類捕食(擬態のベネフィット)がお互いに逆向きの自然選択として、トレードオフの関係でヤスデ類の擬態環の形成、消失、移行に影響を与えているかどうかを検討する。研究の実施にあたっては、(1)ハエ類捕食寄生、(2)鳥類捕食、(3)基礎情報の取得の3項目について、野外調査、分子系統解析、体色波形解析などにより取り組み、得られた結果を総合的に検討する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、ミドリババヤスデ種複合体が東海・関西地方で示す、ミュラー型擬態を含む警告色の地理的モザイク多様化パターンを創出する進化メカニズムの解明を主要な目的の一つとしている。ミュラー型擬態では、種間で類似の警告色の進化が促されるが、それにも係わらず警告色に多様性が生じていることは注目されるところである。 本件において、寄生バエ類の影響に着目し、得られたデータを整理し、ヤスデ体色の反射波形を用いた系統比較法を含む各種の解析を実施することで、次の結果を得た。(1)ハエ寄生率はオレンジ度の低い(灰、中間色)ヤスデで高い (2)ハエに寄生されたヤスデの半分以上(50%から71%) がハエ寄生で死ぬ 。(3)ハエ寄生率はヤスデ集団あたり0%から45%で地理的にばらつく 。(4)ハエ寄生率は時間的に安定する。これらの結果から、地理的にばらつく(3)、 一部の灰色、中間色のヤスデ集団 に対し(1)、ハエ寄生は生存率を大きく下げる(2, 3)継 続的な選択圧としてはたらき(4) 、ヤスデ体色の灰色・中間色からオレンシジへの移行を促しているのではないかとの結論を得た。 併せて、系統比較法を用いて、ミドリババヤスデ種複合体の警告色進化における警告色の進化パスを解析し、上記の寄生バエ類の解析結果を組み合わせると、ヤスデ警告色の灰色とオレンジの間、及び中間色とオレンジの間の移行については、ハエ類の捕食寄生が影響していると考えられた。 これらの結果は、ミュラー型擬態を含む警告色の多様化に、新たなメカニズムを提唱するものであり、その成果については、第71回日本生態学会大会にてポスター発表を行った。 上記と並行して、本研究課題の最初の論文の執筆に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、ヤスデ類の分布、体色解析、系統解析、ヤスデに寄生するハエ類の寄生解析等、多方面の項目について、時間と労力をかけてデータを得て解析する必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
雇用の活用:本研究課題では、最初の論文の執筆に入っており、図表の作成に係わるデータ整理等で雇用による技術支援を活用する。
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