研究課題/領域番号 |
20K06802
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
高橋 亮雄 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (50452967)
|
研究分担者 |
池田 忠広 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (50508455)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | インドネシア / ジャワ島 / 更新世 / 爬虫類 / 化石 / 古地理 / 絶対年代 / スンダ列島 / 脊椎動物化石 / 動物地理 / 広域分布 / 個体群消滅 / 絶滅 / 人為移入 / 陸生脊椎動物化石 / 発掘調査 / 広域分布種 / スンダ陸棚 / 分散 / 大陸島 |
研究開始時の研究の概要 |
大スンダ列島の現生陸生脊椎動物相は、後期更新世に想定される陸橋を通じて大陸より分散してきた広域分布種を高い割合で含んでいる。近年の分子系統学的研究は、こうした種ないし種群の多くで、著しい分化やその後の二次的接触による交雑が生じたことと、これらが従来の想定よりも古い時代に島嶼へ分散してきたことを強く示唆したものの、各系統の分散や分化に関する仮説や分岐年代を示すには至っていない。本研究では、ジャワ島において陸生爬虫類化石に着目した発掘調査とその同定・分類および化石含有層の年代測定を行い、この島の陸生脊椎動物相の起源や分散、多様化プロセスに関するより確度の高い仮説の構築をめざす。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、バンドン地質博物館、サンギラン博物館およびセメド博物館に収蔵されているサンギランおよびセメド一帯の下~中部更新統産の爬虫類化石について検討を行った。その結果、未報告のメガロケリス属とインドリクガメ属(いずれもリクガメ科)および数種のイシガメ科、スッポン科、ヤスリヘビ科の化石が確認された。メガロケリスの化石は2点の外腹甲骨からなり、セメドから発見されていることなどから、単一の種に帰属すると考えられる。化石に保存されている腹甲前方の突出部(本属の特徴のひとつ)は発達の程度において互いに異なるが、この相違は性差を示すと考えられる。インドリクガメ属の化石は、内腹甲骨が胸鱗板に被覆されていることから、インド東部~マレー半島北部に分布するエロンガータリクガメに同定された。イシガメ科の化石には広く東南アジアに分布するマレーハコガメとマレー半島南部、スマトラ島およびボルネオ島に分布するボルネオカワガメ属などが含まれていた。スッポン科の化石はすべて断片的なもので、分類学的帰属は明らかになっていない。ヘビ類の化石には、ジャワヤスリヘビとヒメヤスリヘビが含まれていた。これら2種は島嶼部を含む東南アジアに広く現生分布する。今年度の調査で確認された化石のうち、メガロケリス属とエロンガータリクガメおよびマレーハコガメは、昨年のブミアユ地域における調査においてもジャワ島最古の脊椎動物化石群集(Satir Fauna)を産する層準から確認されている。従来の研究では、Satir Faunaは固有の哺乳類化石で特徴づけられ、これをもとに約200万年前のジャワ島は孤立した島嶼であり、当時の陸生生物は漂流分散によりもたらされたと考えられてきた。しかしながら、今年度の成果は当時の陸生脊椎動物相に広域分布種も多く含まれていることを明らかにするもので、現行の古地理仮説に疑問を投げかけている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度はインドネシアへの渡航およびジャワ島内での移動や研究機関への訪問が、特別な許可を得ることなしに行うことができるようになった。このため、10月にインドネシアのバンドン地質博物館を起点として、前年度に訪問できていなかったサンギラン博物館へ赴くとともに、2022年度に予備調査を行ったセメド博物館も再訪問し、研究許可を得て収蔵されているカメ類とヘビ類の化石について検討を行うことができた。検討した化石は長い間に蓄積されてきた未報告のもので、多くの新知見をもたらしうるものであった。一方で、それらのほとんどは、多かれ少なかれ堆積物に覆われており、化石として保存されている全ての部位に関する形態的特徴について確認することができなかった。また、残念ながら訪問した博物館にはクリーニングに必要な機材が備わっていなかったため、改めて訪問しクリーニング作業を行う必要が生じた。このほか、化石との比較に用いる形態データの蓄積を目的として、3月にZoological Survey of Indiaを訪問し、インドからミャンマーに分布する現生カメ類とヘビ類の骨格標本コレクションの一部から形態データを収集することができた。しかしながら、検討できた骨格標本の多くは150年以上前に作成された剥製標本に由来するもので、産地に関する詳細な情報を欠いており、さらに保存状態において問題のあるものも少なくなかった。このため、南アジアの爬虫類の骨形態データについては、理想的にはヨーロッパや北米の博物館に収蔵されているコレクションを参照し、データの補完を行うことが望ましい。以上のように、2023年度は海外渡航が可能となって2年目であり、当初の計画に沿ってある程度研究を進めることができたものの、新型コロナの影響による研究の遅れを挽回するには至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度までの調査によって、これまで知られていなかったジャワ島産の前~中期更新世の爬虫類(とくにカメ類)化石について参照することが可能となった。しかしながら、多くの標本は採集された当時のまま保存されているため、研究に資するためにはまず化石の表面を覆う堆積物を除去する必要がある。そこで2024年度は、前年度の研究成果を事前にまとめたうえで、バンドン地質博物館、サンギラン博物館、セメド博物館を再訪問のうえ化石のクリーニング作業を実施し、標本から効率的に形態データを収集し、研究成果の公表をめざす。なお、クリーニング作業に必要な機材一式はいずれの博物館にも設置されていないため、出発前にあらかじめ準備する必要がある。
|