研究課題
基盤研究(C)
熱水噴出域固有生物の集団形成過程を明らかにするため、ホウキガニ科カニ類を材料として、種分類の再検討、地理的分布の把握および集団遺伝解析を行う。また、有毒な硫化水素を無毒化する細菌をホウキガニ類は体内共生させているが、その共生細菌相の遺伝解析を通じて、ホウキガニ類が共生細菌をいつ、どこで獲得し、どのように伝搬するかを明らかにする。
本研究では、熱水噴出域固有生物の集団形成過程を明らかにするため、ホウキガニ科カニ類を材料として、種分類の再検討、地理的分布の把握および集団遺伝解析を行う。熱水噴出域は時として隣同士でも1,000km以上離れていることもあり、その固有生物がどのように分布を広げているのかは長年の謎となっている。その謎を解明するためには、採集に特殊な研究船を必要としない、浅海に生息するホウキガニ類は格好のモデルとなる。今年度はこれまでに得られたサンプルをもとにニシノシマホウキガニの集団遺伝解析を行い、熱水噴出域固有生物の集団形成過程を明らかにしてく予定であったが、トカラ列島の来島規制が解除されたことから採集調査を計画した。しかし、トカラ列島は順調に調査ができるのが夏季に限られるため、日程が折り合わず来年度に持ち越しとなった。2021年度に実施した大室ダシ調査で採集したサツマハオリムシの遺伝的組成を明らかにするため、SNPによる集団遺伝解析を行った。その結果、鹿児島湾、大室ダシ、北マリアナの集団で遺伝的分化がみられた。これは分布や生息水深がよく似たニシノシマホウキガニとのよい比較対象となる。今年度実施した沖縄トラフの調査では、奄美大島の西方にある奄美リフト水深約630mの地点で、新規熱水噴出域を発見した。合計29種のマクロベントスを確認し、そのうちツノクリガニ属の1種は未記載種と考えられる。現在論文を投稿し、印刷中である。
4: 遅れている
今年度はトカラ列島調査待ちで1年滞ってしまったが、これまでにホウキガニ類の標本をトカラ列島南部、薩南諸島、伊豆諸島、小笠原諸島の各地点から30個体ずつ採集できており、集団遺伝解析の準備は整っている。次年度トカラ列島北部で採集を行い、分子実験を行うことで研究計画を完遂できる見込みである。
次年度はホウキガニ類について、トカラ列島北部で採集調査を行った後、ミトコンドリアCOI遺伝子を使って集団遺伝解析を行い、更にMIG-Seq解析によってより詳細な解析を行う予定である。また、ハオリムシ類に共生するカクレエビ類、熱水域から採集された貝形虫類、多毛類などの分類学的研究を進める予定である。
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