研究課題
基盤研究(C)
熱水噴出域固有生物の集団形成過程を明らかにするため、ホウキガニ科カニ類を材料として、種分類の再検討、地理的分布の把握および集団遺伝解析を行う。また、有毒な硫化水素を無毒化する細菌をホウキガニ類は体内共生させているが、その共生細菌相の遺伝解析を通じて、ホウキガニ類が共生細菌をいつ、どこで獲得し、どのように伝搬するかを明らかにする。
本研究では、熱水噴出域固有生物の集団形成過程を明らかにするため、ホウキガニ科カニ類を材料として、種分類の再検討、地理的分布の把握および集団遺伝解析を行う。熱水噴出域は時として隣同士でも1,000km以上離れていることもあり、その固有生物がどのように分布を広げているのかは長年の謎となっている。その謎を解明するためには、採集に特殊な研究船を必要としない、浅海に生息するホウキガニ類は格好のモデルとなる。今年度はニシノシマホウキガニのタイプ産地である西之島で採集調査を計画していたが、噴火が収まらず警戒範囲も縮小されなかったので、誠に残念ながら調査を断念することにした。次年度にこれまでに得られたサンプルをもとに集団遺伝解析を行い、熱水噴出域固有生物の集団形成過程を明らかにしてく予定である。今年度実施した福徳岡ノ場の調査では、福徳岡ノ場の西方水深約700mの地点で、ノコギリエンコウガニ属の1未記載種を発見し、現在記載論文を準備中である。また、噴火口西側水深約500mの地点では、噴火影響後の生物の遷移状況を継続してモニタリングしている。4月に採集された熱水噴出域固有と考えられる多毛類の1種が8月には姿を消していたので、火山ガスの放出が終わり生息環境が変わったため、遷移が進んでいるのかもしれない。昨年度実施した大室ダシ調査で採集したサツマハオリムシの遺伝的組成を明らかにするため集団遺伝解析を行い、現在論文準備中である。
4: 遅れている
今年度は西之島調査待ちで1年滞ってしまったが、これまでにホウキガニ類の標本をトカラ列島、薩南諸島、伊豆諸島、小笠原諸島の各地点から30個体ずつ採集できており、集団遺伝解析の準備は整った。次年度分子実験を行うことで研究計画を完遂できる見込みである。
次年度はホウキガニ類について、ミトコンドリアCOI遺伝子を使って集団遺伝解析を行い、更にMIG-Seq解析により、より詳細な解析を行う予定である。また、ハオリムシ類に共生するカクレエビ類、熱水域から採集された貝形虫類、多毛類などの分類学的研究を進める予定である。
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Nature of Kagoshima
巻: 48 ページ: 15-17