研究課題/領域番号 |
20K06820
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 健大 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 開発研究員 (00748999)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 生物群集 / 微生物叢 / エネルギーランドスケープ / 多重安定性 / 最大エントロピー原理 / 変動予測 / マルコフネットワーク / 数理モデル / エネルギーランドスケープ解析 / 微生物群集動態 / 早期警戒シグナル / 多変量時系列解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、マルコフネットワークが群集動態の新たな理論モデルとなることを示したい。このため、マルコフネットワークに基づく群集動態モデル(エネルギーランドスケープ)が微生物群集の大規模変動を事前検知できるかを検証する。群集の変動規模に目立った変化が無くても、群集組成の変化に不安定化に先立つ何らかのパターンがあれば、それはエネルギーランドケープ上でエネルギーの高い(=不安定な)状態への接近として捉えられ、早期に大規模変動を検知できるかもしれない。このようなシグナル検出が可能であれば、マルコフネットワークは群集動態の背後にある普遍的なメカニズム(群集動態の非ランダム性)を捉えていると考えられる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、1) 微生物群集の組成データから群集動態の予測モデル構築・動態解析を行うための手法開発、2) 微生物群集の変動性を評価するための安定性指標の開発、3) 指標を使った群集の変動性の予測可能性の評価、を行いペアワイズ最大エントロピーモデル(マルコフネットワーク; 以下、モデル)に基づくエネルギーランドスケープ解析が群集生態学の強力な新手法となることを示すことである。 本年度は、1)の手法開発に集中して取り組んだ。開発には主に二つの課題があった。エネルギーランドスケープ解析では、観測データに基づきモデルのパラメータを推定する必要がある。一つ目の課題はこのパラメータ推定の手法についてである。微生物叢が環境から受ける影響を考慮する場合、モデルのパラメータ推定に標準的な手法を利用することができない。そこで、確率的な推移過程からパラメータを推定する効率的な手法を実装し、この問題を解決した。二つ目の課題は、エネルギーランドスケープの構造の把握と関係している。モデルが定義するエネルギーランドスケープは、例えば考慮する種数が20種の場合およそ100万のノードからなる重み付きネットワークとなる。エネルギーランドスケープ解析は、このような重み付きネットワークのポテンシャル構造の要約を目的とするが、ネットワークが巨大になると計算時間が増大する。この問題について、近似的な探索手法を導入することで解決した。 開発手法の信頼性を検証するため、微分方程式により個体群動態を記述したシミュレーションモデルを構築、仮想データを生成しベンチマークを実施した。ベンチマークの結果、開発手法はシミュレーションモデルが持つポテンシャル構造を少ないデータから十分正確に、かつ速やかに推定できる実用的な手法であることが言えた。この結果をすでに執筆中であった論文に含めて改訂し、学術誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、生物群集動態の予測モデル構築・動態解析の基盤となる手法を開発することができた。
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今後の研究の推進方策 |
二つ目の開発項目として、エネルギーランドスケープを利用した生物群集の安定性指標の開発・評価に取り組む。また、生物間相互作用のスパース性を考慮し、パラメータ推定手法の改良を行う。さらに、これまでの開発内容を整理・統合し、汎用的な解析パッケージの開発・公開を行いたい。
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