研究課題/領域番号 |
20K06825
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2021-2022) 大阪大学 (2020) |
研究代表者 |
細田 一史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 客員研究員 (30515565)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 実験生態系 / 人工生態系 / 生物群集 / 種間相互作用 / 微生物 / 適応 |
研究開始時の研究の概要 |
生態系における生物群集は、しばしば2種間相互作用の総和として理解される。しかし各2種間が全てわかれば群集全体がわかるというわけではない。では全ての2種間がわかれば、どれだけ全体が予測できるのか?逆に全体からは、どれだけ2種間が予測できるのか? 本研究では、微生物による人工生態系を用いて「群集全体と各2種間総和の関係」を解明する。具体的には、微生物12種を混合した人工生態系をつくる。一方で、単種および2種の全組み合わせを調べて全種と比較し、これらの関係を明らかにする。本研究の解明により「各生物種の生態」と「群集や生態系」がより強くつながれば、生態学のさらなる発展促進が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、微生物による人工生態系を用いて、群集全体と各2種間相互作用総和の関係を解明する。全体として次の5項目を行う:[1] 単種の系、2種の系、全種の系の実験と測定、[2] 機械学習による生物種同定手法の確立、[3] 全種のデータから推測される種間相互作用と、2種のデータとの比較、[4] 単種及び2種のデータからの全種予測と、全種のデータとの比較、[5] 総合解析とまとめ。このうち2022年度には計画通り[4]および[5]について取り掛かり、以下のような結果を得た。 前年度に続き、3種以上のデータを用いずに単種と2種のデータを説明するモデルを作り、このモデルが3種以上のデータをどれだけ予測できるかを調べた。前年度には、一般化線形モデル(GLM)では予測と実験が合わない部分が多いこと、動態モデルとして多種のMonod型モデルを用いた場合には多くが矛盾なく説明できることが分かっていた。本年度は、この動態モデルを用いて、さらに複雑な状況である『生態系と生態系の混合』を試した。この実験を行い、動態モデルの予測と比較したところ、やはり多くが矛盾なく説明できることが分かった。以上から、動態はおよそ理解できたと考えられる。 一方、説明できない部分もある。それは主に生物の適応であり、例えば大腸菌は世代を超えずに形状が変化し、これが大きく動態に影響することが分かっていた。これに関しては、捕食者に依存するケミカルな応答での表現型可塑性が含まれることを実験的に確かめた。それ以外にも、長期に培養した際の変化は説明できていない。これは進化と考えられるため、生物を単離し、再度混合すると、その生物の性質は元のものとは変化していることが確認された。これら適応は非常に重要であるが、本研究の枠を超えており、重要な次の研究につながったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書の通りの結果が得られている。昨年度までの新型コロナウイルス感染症の影響と、当初予定に無かった2年連続での研究代表者の異動による実験データ量の減少があり、またEDMを用いた解析による結果があまりうまく出ていないことがあるが、一方で、主に生態系の上の階層を含めた動態や、生物の適応に関して等、他の観点を加えることで種間相互作用に対する理解が当初の計画以上に進展した部分もあるため、総じて、「順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には計画通り[5]総合解析とまとめをおこなう。 具体的には、これまで得られた結果をまとめて論文化する。これにともない、少し目的がことなる各々の実験の結果をあわせて解析することで、統合的な理解も試みる。 また、多種の系から2種の相互作用の情報を抽出するEDMについて、これまであまりはっきりとした結果が得られていないため、引き続き、主に解析手順の詳細に注目して調べる。 さらに、本研究の結果として、新たに重要で発展的な問いが複数派生しているため、これらの関連を含めた解析を行う。 最後に、上記のように多くの発展が見込まれる中で非常に残念ながら、研究代表者が本実験系を用いた研究を継続できなくなったため、本研究の成果を後続の研究者が発展しやすいように知見や実験系をまとめる作業も行う。
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