研究課題/領域番号 |
20K06827
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山田 俊弘 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (50316189)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 個体群生態学 / 見かけの動態 / 真の動態 / 推移確率行列 / 熱帯雨林 / 測定間隔 / 体群生態学 |
研究開始時の研究の概要 |
樹木の個体群動態研究では、生残率が測定間隔に依存して薄められてしまうリスクをともなうが、この効果について検討されたことは無い。本研究は、これまでの植物個体群動態研究の知見に立脚し、それまで誰も考えたことの無かった問題に対峙する、学術性と創造性の高いものである。本申請課題では以下の二つの問いを投げかけ、その答えを得る。 問い1 森林観察の測定間隔による生残率の希釈は、個体群動態解析にどれだけ強く影響を与えているのだろうか? 問い2 実現可能でかつ、測定間隔の希釈の影響を取り除く、樹木個体群動態の研究方法とは、なんだろうか?
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研究実績の概要 |
木本類の個体群動態研究では、数年間隔で野外データがとられることが普通である。このやり方は、生残率の年変動が測定間隔に依存して薄められてしまうリスクを伴う。例えば、5年に一度だけ大干ばつが起こり、この年だけ死亡速度が 急激に上昇したとしよう。この場合、毎年データを取っているならば問題ない。しかし、データを5年間隔でとっていた場合はどうだろうか。この場合、干ばつによる死亡の急上昇の効果は、5分の1に薄められることとなる。たかが5分の一に薄められたと思われるかもしれない。しかし、個体群動態に対して、死亡の効果が非常に大きいことが知られているため、5分の1の希釈の効果がとんでもなく大きく個体群動態に影響することが心配される。本研究課題は、これまでの植物個体群動態研究の知見に立脚し、それまで誰も考えたことの無かった生存率の希釈、つまり、見かけの個体群動態に関する問題に対峙する。 2023年度は、マレーシア国ヌグリスンビラン州パソ保護林とマレーシア国サラワク州ランビル国立公園で大規模調査区内の調査対象個体を選び出す作業を行う予定としていた。しかし、昨今のコロナウイルス感染拡大に伴い、渡航を伴う海外での調査が実施不可能となった。そこで、あらかじめ用意していたプランBを実施することで、渡航ができなくても研究を進めることとした。調査対象としている森林では現在、5年間隔での森林観察が実施されている。このデータを用いれば、見かけの動態は再現できる。こうして見かけの動態を渡航せずに作成した。こうして、希釈の効果の概要を数値的に示すことに成功した。 研究成果は論文としてまとめられ、Scientific Reportsに投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨今のコロナウイルス感染拡大のため、渡航を伴う海外での調査が実施不可能となった。しかし2023年度は、あらかじめ用意していたプランB(既存のデータと先行研究に記載されている旱魃時の生残率の値を利用して個体群推移行列を作成)を実施することで、研究を進めることができた。こうした非常時のバックアッププランを用いることで、2023年度も研究を進めることができ、おおむね順調に進めることができた。 さらに、これら成果を論文にまとめ、投稿・出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度では、生残率が測定間隔に依存して薄められてしまうリスクを既存のデータを用いてシミュレートすることに成功し、それを論文にまとめた。しかし、本研究課題では、実際のデータを用いて見かけの動態と真の動態を比較することが目的であった。残りの研究期間では、この目的の遂行を目指す。2024度以降は、これまでに予定していた調査を、後ろ倒して行う。 2024年からの1年間の死亡率を決定し、1年を単位とした個体群動態モデルを構築する。そして、1年単位の個体群動態モデルと、既存のデータからつくられた5年間の平均値を用いた個体群動態モデルを比較することで、5年間の平均化による希釈の効果を定量する。 この実施案を行える可能性が残っているため、研究計画作成時に掲げた当初の目標は変更しない。当初の目標とは、目標1(複数年以上の測定間隔により生残率や繁殖率の希釈の効果がどの程度大きいのか、そして、この効果によりもたらされる見かけの動態と真の動態の差を定量的に評価する)と、目標2(実現可能であり、かつ、個体群動態が歪められない森林観測方法を提案する)の成果を科学のリーディングジャーナル(IF値5.0以上)に公表する、の二つである。
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