研究課題/領域番号 |
20K06830
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
高倉 耕一 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (50332440)
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研究分担者 |
吉山 浩平 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (90402750)
吉山 洋子 龍谷大学, 農学部, 実験助手 (80519968)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 競争排除 / ゾウリムシ / 繁殖干渉 / ゾウリムシ類 / 培養条件 / 植物抽出液 / 競争排除則 / Gause / 資源競争 / ガウゼの法則 / 種の共存 |
研究開始時の研究の概要 |
2種の生物が餌をめぐって競争関係にある場合、そのうちの一方が競争に負けて排除されてしまうという考えは、きわめて直感的に納得できるものである。この考えは、競争排除の法則として生態学の専門家の中でも受け入れられてきた。その実証的な証拠とされる研究も複数知られていたが、近年になってそれらの研究のほとんどが競争の証明ではなかったことが示された。現在のところ、餌をめぐる競争の実証的証明として残っているのは、1934年に発表されたゾウリムシ類を用いた実験のみと言っても過言ではない。本研究は、この大昔に行われた研究を、最新の生態学の理論に基づいて再検証し、生態学の基本理論を問い直すものである。
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研究実績の概要 |
本年度は、複数のゾウリムシParamecium caudatumのシンジェン(互いに交配不可能な系統)とヒメゾウリムシParamecium tetraureliaを用い、一般的な生物の性に当たる接合型の全ての組み合わせを設けた混合培養を行って、これら2種細胞の動態を観察した。その結果、いずれのシンジェンのゾウリムシを用いた混合培養においても、ヒメゾウリムシによるゾウリムシの競争排除は生じなかった。 シンジェン4のゾウリムシを用いた混合培養では、接合型の組み合わせによらず、ゾウリムシの密度がヒメゾウリムシよりも安定的に高くなった。どの接合型の組み合わせにおいても、ヒメゾウリムシが排除されることはなかった。 シンジェン3のゾウリムシを用いた混合培養では、ゾウリムシの接合型がO型であるとき、ヒメゾウリムシの接合型にかかわらず、細胞数はほとんど増加しなかった。しかし、40日超の培養期間の間に絶滅することもなかった。一方で、ゾウリムシの接合型がE型であるとき、ヒメゾウリムシの接合型にかかわらず、ゾウリムシを単独で培養した場合と同様の密度に達し、この高密度は安定的に維持された。ヒメゾウリムシは、ゾウリムシと混合で培養された場合も単独で培養された場合も、細胞密度のちがいはほとんどなかった。 ゾウリムシ-ヒメゾウリムシの相互作用系における競争排除は、生態学の黎明期より資源をめぐる競争による排除の代表例とされてきた。しかし、本研究の結果は、この種間の相互作用の帰結として、競争排除は必ずしも一般的ではないことを示している。さらに、この種間相互作用において、接合型すなわち性が何らかの重要な役割を担っていることが示唆された。性がどのようなメカニズムで密度の動態に影響しているのかについては、より詳細な研究を行い確かめる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症流行に伴う研究施設の利用制限や、研究者や協力者等の感染により、しばしば研究を中断せざるをえない状況に見舞われたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは個体群(細胞密度)の動態に注目して研究を進めてきた。2022年度までの研究で、接合型に関連した個体群動態の違いが見られる系統・接合型の組み合わせが見つかったので、2023年度にはより詳細なメカニズムの解明を目指し、個体レベルでの観察を行いたい。
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