研究課題/領域番号 |
20K06835
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45050:自然人類学関連
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
菊池 泰弘 佐賀大学, 医学部, 講師 (70325596)
|
研究分担者 |
荻原 直道 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70324605)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | ナチョラピテクス / 椎骨 / 中新世 / 大型類人猿 / Procrustes解析 / 三次元幾何学形態測定学 / 胸椎 / 化石類人猿 / 中期中新世 / 三次元幾何学的形態測定学 / 変形成分除去 / 脊柱 / 復元 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトを含む現生大型類人猿の共通祖先が分岐した前後にあたる約1500万年前のアフリカ・ケニア産化石類人猿「ナチョラピテクス」において、体幹骨の椎骨標本を用いて三次元再構築手法によって脊柱全体像の復元を行い、1500万年前の化石類人猿にヒト直立姿勢のきっかけを見出すことができるのかを検証する。現生大型類人猿の進化における形態学的エビデンスから、ヒト科への初期ターニングポイントを探り、今後、人類進化を考える上で必要不可欠な要素・要因・契機の抽出を目指す。
|
研究実績の概要 |
ナチョラピテクス上位胸椎標本KNM-BG48094(第3-5胸椎と推定)について、昨年度に化石化の過程で変形した成分を除去し原型復元に成功したので、本年度は現生種との比較分析を進めた。比較標本は、大型類人猿3種、小型類人猿1種、旧世界ザル13種(樹上性5種、アームスイング移動運動を含む樹上性2種、地上性7種)、新世界ザル2種の第3-第5胸椎、総標本数90点とした。CTスキャナーを用いて全標本の断面撮像データを取得し、三次元再構築することで座標系に展開した。次に、得られた座標系において相同点85点を決め、Procrustes解析を用いてサイズの正規化と位置合わせを行った後、三次元幾何学形態測定学による主成分分析で座標(シェープ)を解析した。結果:ナチョラピテクス上位胸椎は、その椎体が頭側が狭く、尾側が広い、また、頭尾方向に短い形状を示した。また、横突起は長く、これは肋骨を強固に固定するための形態だと考えられる。横突起は大型類人猿に似てより背側に向いている一方で、類人猿よりはその程度が弱いながらその基部がやや背側に位置することから、ナチョラピテクス脊椎の腹側陥入はおそらく弱く、類人猿や四足歩行の旧世界サルとは異なる横突起形態であることを示唆している。さらに、ナチョラピテクスの胸椎は、Nasalis-Pygathrix-Alouatta-Atelesのような上関節突起・関節面の向きと、尾側に傾斜した棘突起基部を有している。この棘突起基部の尾側傾斜と、脊椎腹側陥入の弱さが組み合わさって、類人猿や四足歩行の旧世界サルとは異なる上部胸椎の特異的な機能的要求に貢献していたことが示唆される。また、ナチョラピテクスの上関節突起・関節面の向きは、樹上四足歩行に特化した旧世界サルとは異なり、より直立した姿勢に関連した移動運動様式を示唆していることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化石化の過程で変形した成分を除去し現生種との比較分析の手法を確立することができたため。また今後、他の脊柱部位に同分析方法を進めていくための3Dデータについて、化石種および現生種、どちらも順調に取得することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
すでに公表済み(Kikuchi et al., 2012; Kikuchi et al., 2015; Kikuchi et al., 2016)である標本(環椎標本、下位胸椎標本など)、および新規標本(第6頚椎標本、寛骨標本など)の3Dデータは今年度取得済みであることから、来年度は上位胸椎で行った分析方法を取得済みの3Dデータに適用し、ナチョラピテクスの脊柱全体の復元を目指す。分析結果は、随時国内学会や学術雑誌で公表していく。
|