研究課題/領域番号 |
20K06858
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 (2023) 鹿児島大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
山下 哲 和歌山県立医科大学, 薬学部, 准教授 (40740197)
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研究期間 (年度) |
2022-11-15 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ストレス / オレキシン / 自律神経 / 防衛反応 / ファイバーフォトメトリー / 光遺伝学 / うつ / オプトジェネティクス |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者は、繰り返しストレスによる慢性的なオレキシン神経活動増加による交感神経賦活化が、うつ病発症に関わっているのではないかと仮説を立てた。すなわち、ストレス暴露時にオレキシン神経活動を制御することで、過度な交感神経活動を防ぎ、うつ病発症の「予防」ができるのではないかと考えた。これを証明するために、多様な生理機能をもつオレキシン神経回路のうち、自律応答神経回路を同定し、これを制御した際にうつ病発症へ影響を与えるか否か検証する。本研究を推進するにあたり、自由行動マウスからの特定神経活動記録法・操作法と逆行性AAVを組み合わせた実験を行う。
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研究実績の概要 |
動物が天敵と対面した際、動脈血圧、心拍数および呼吸数の急激な増加等を特徴とするストレス防衛反応と呼ばれる反応がみられるが、この反応に視床下部領域が重要な役割を果たしている。本研究課題では、in vivo ファイバーフォトメトリーシステムを使用して、自由に動いている最中のマウスの視床下部オレキシン神経活動と心拍数変化を同時記録することにより、ストレス防衛反応に対するオレキシン神経活動の役割を調べた。その結果、嫌悪ストレス刺激を与えた直後に自律神経反応の指標である心拍数とオレキシン神経活動が増加することが明らかとなった。これらの反応を詳細に解析したところ、心拍数の急激な上昇に先がけてオレキシン神経活動が上昇している可能性が示唆された。さらに、マウスの心拍およびオレキシン神経が反応しないよう調整した音を条件付け刺激として用いて条件付け実験をしたところ、条件付け後には心拍応答およびオレキシン神経の増加が見られるようになった。続いて、このようなオレキシン神経活動変化と心拍応答の因果関係を調べる目的で、化学遺伝学的手法を用いて、CNOによりオレキシン神経特異的に神経活動を抑制することができるマウスを作製した。このマウスに嫌悪ストレス刺激を与えたところ、CNO投与マウスにおいて生食投与マウスと比較し、ストレスにより誘発される心拍数の上昇幅が減弱することが明らかとなった。今後は、オレキシン神経の投射先領域においてファイバーフォトメトリー法を用いて in vivo 計測を行い、下流神経回路を明らかにして いくことで、オレキシン神経を基軸としたストレス誘発自律応答の神経回路の全容を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嫌悪ストレス誘発自律神経応答において、オレキシン神経活動と嫌悪ストレスによる心拍上昇応答の、因果関係まで証明することが出来た。留学中の1年間の中断とこれによる研究期間の延長を考慮すると、概ね順調にすすんでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
嫌悪ストレス刺激による自律応答神経回路の脳内メカニズムとして、オレキシン神経活動を基軸とした嫌悪ストレス誘発脳内自律応答神経回路の全容を明らかと出来たら、次は慢性的なストレスによるオレキシン神経と自律応答の関わりについても調べる予定である。今後、ストレス誘発自律応答回路が、慢性的な嫌悪ストレスによるうつ病発症にどのような役割を果たしているのか解明したい。これらの成果により、繰り返す過度なストレスによる自律神経の異常応答とうつ病発症に対する治療標的としてのオレキシンの可能性を検証することができると考えてい る。
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