研究課題/領域番号 |
20K06909
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
西住 裕文 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (30292832)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 嗅覚 / 刷り込み / 神経回路 / 臨界期 / 発達期 / 感覚入力 / 意思決定 |
研究開始時の研究の概要 |
高等生物は、発達期に外環境から受容する感覚刺激によって、脳神経を可塑的に変化させ、嗜好性・社会性・環境適応性などを獲得する。我々はマウス嗅覚系を用いて、臨界期における嗅覚刺激が、先天的神経回路の強化や神経地図の精緻化のみならず、その出力判断の抑制もしくは変更を引き起こすことを見出した。例えば、新生仔期に特定の匂いを刷り込んでおくと、その匂いが先天的に忌避性の匂いであっても、成長後、その匂いに対して愛着行動を示すようになることを見出した。これらの予備実験に基づき、匂い刷り込み記憶の機序解明を糸口として、嗅覚情報に基づく意思決定機構の理解を目指す。
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研究成果の概要 |
発生初期の感覚入力により、神経回路が可塑的に修正される臨界期が存在する。我々はマウス嗅覚系を用いて、匂い刷り込みの研究を行った。新生仔マウスに特定の匂いを嗅がせると、反応した糸球体内でSema7Aの発現が高まり後シナプスの成熟が促進された。また、嗅がせる匂いが忌避性であっても、誘引性の質感が付与されることも見出した。KOマウスの解析から、匂いに誘引性の質感を付与するのにオキシトシンが重要であることが判明した。一方、臨界期にSema7Aシグナルを遮断すると、成長後のマウスの社会性行動に障害が生じた。本研究はSema7Aとオキシトシンが、臨界期における匂い刷り込みに必要であることを明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
カモの雛が最初に見た動くものを親と記憶し後追いする刷り込み現象は、百年以上前にローレンツ博士らが報告したが、その仕組みは未だほとんど解明されていなかった。本研究では、マウス嗅覚系を用いて、新生仔期に匂い刷り込みが成立することを、分子・神経回路・行動レベルで明らかにした。逆に、臨界期に感覚入力が阻害されると、成長後の社会行動に異常が生じることも発見した。以上の研究成果は、感覚入力の阻害や異常入力によって生じる自閉症や愛着障害などヒトの精神発達疾患の、理解や治療法の開発にも繋がることが期待される。
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