研究課題/領域番号 |
20K06953
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
小林 数也 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80647868)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | プロテアーゼ阻害剤 / ヒドロキシプロリン / BACE1 / SARS 3CLプロテアーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)は、多様な生命現象に関与していると同時に、様々な疾患にも関与している。これまでにも疾患関連プロテアーゼを標的とした阻害剤開発研究が行われ、多くの成果が得られているが、本領域の更なる発展のためには、低分子阻害剤を直接的かつ簡便に設計することができる汎用的な手法の確立が必要である。本研究では、2つの異なる種類のプロテアーゼを標的として、ヒドロキシプロリン骨格を基盤とする同一戦略に基づきそれぞれの阻害剤開発研究を遂行することで、本戦略の汎用性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続きヒドロキシプロリンを基盤としたβ-セクレターゼ(BACE1)及びSARS 3CLプロテアーゼ(3CLpro)阻害剤の構造活性相関研究を展開した。 (1)BACE1阻害剤の構造活性相関研究では、これまでに見出した3-メチルフェニル誘導体(IC50 =160 μM)を基盤として、ビフェニルアミノ基の末端芳香環へのヘテロ原子の導入を検討した。末端のベンゼン環を3-ピリジンおよび1-メチル-1H-ピラゾールに置換した誘導体を合成し阻害活性の評価を行ったところ、いずれも活性の大幅な減弱が確認された。これらの結果は、昨年度検討したビフェニルメチル基の末端芳香環にヘテロ原子を導入した際の結果と類似しており、アミノビフェニル基の末端芳香環へのヘテロ原子の導入もBACE1との相互作用形成に置いて不利に働くことが示唆された。続いて、ビフェニルアミノ基へのカルボニル基の導入を検討し、末端芳香環のメタ位とオルト位にメトキシカルボニル基およびカルボキシル基を導入した誘導体の合成を完了した。 (2)SARS 3CLpro阻害剤の開発研究では、昨年度最適化したヒドロキシプロリンの水酸基へのジフェニルメチル(DPM)基の導入反応を用いて、種々置換基を有するDPM基を導入した誘導体の合成を行った。また、活性発現に必要な構造情報を得るために、DPM基をベンジル基へと置換した誘導体や、アクリロイル基をプロピオニル基へと置換した誘導体も合成し、活性評価を行った。活性評価はいまだ初期検討の段階ではあるが、DPM基に対する置換基の導入およびベンジル基への変換は活性を僅かに低下させること、アクリロイル基をプロピオニル基へと変換すると活性は低下するが、完全には消失しないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)BACE1阻害剤の構造活性相関研究では、昨年度から継続してビフェニルアミノ基の末端芳香環に関する検討を進め、ヘテロ環への置換による活性への影響を明らかにすることができた。一方で、ビフェニルアミノ基にカルボニル基を導入した誘導体については、合成検討に予想よりも時間がかかってしまい、活性評価を実施するまでは至らなかった。 (2)SARS 3CLpro阻害剤の開発研究では、昨年度確立した反応条件をもとに誘導体合成を展開し、9種類の誘導体の合成を完了した。しかし、阻害活性評価において結果の再現性が取れないという問題が生じたため、合成した誘導体の活性評価を十分に実施することができなかった。アッセイ条件を精査し調整したことでこの問題は解決しており、現在は活性評価を実施できる状態になっている。 以上の点から、本年度の研究はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)BACE1阻害剤の構造活性相関研究では、まず今年度合成したビフェニルアミノ基にカルボニル基を導入した誘導体について活性評価を実施し、カルボニル基の活性への影響について精査する。一方、ドッキングシミュレーションの結果からは、ビフェニル基が剛直かつかさ高いため、ビフェニル基への置換基の導入は、BACE1の活性ポケット内での許容度が低い可能性が示唆されている。そこで次年度は、ビフェニルアミノ基を置換フェニルアミノ基へと変換し、よりコンパクトな構造に基づいて誘導体合成を展開し、高活性誘導体の創出を目指す。100 μM以下のIC50値を示す化合物については、BACE1との共結晶を作成し、X線結晶構造解析を行うことで結合構造を同定する。得られたデータを基に新たな分子設計を行うことで、研究の効率化を図る。 (2)SARS 3CLpro阻害剤の開発研究では、合成した誘導体の阻害活性評価を実施し、正確な阻害能を算出するとともに、更なる誘導体合成を展開する。特にwarheadは、プレリミナリーなデータではあるもののシステインチオール残基と共有結合可能な官能基でなくても活性が維持される可能性が示されたため、非共有結合性阻害剤への展開を視野に入れて、warhead構造の詳細な探索を実施する。また、これまでに合成した誘導体も含めて100 μM以下のIC50値を示す化合物については、(1)と同様にプロテアーゼとの共結晶を作成し、X線結晶構造解析を試み、分子設計の効率化を図る。
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