研究課題/領域番号 |
20K06982
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
大塚 安成 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (00778219)
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研究分担者 |
高橋 良昭 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 特任研究員 (70171535)
五十嵐 雅之 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 部長 (40260137)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 抗生物質 / アミノグリコシド / 構造活性相関 / 多剤耐性グラム陰性菌 / カルバペネム耐性 |
研究開始時の研究の概要 |
多剤耐性グラム陰性菌の出現と蔓延は世界中で社会問題となっている.特にカルバペネム耐性グラム陰性菌による感染症は治療法が限られており,早急な対策が求められている.我々は天然物butirosin Bが,カルバペネム耐性グラム陰性菌の産出する酵素に効果を発揮することを見出した.従ってbutirosin Bを基盤とした創薬研究は,多剤耐性グラム陰性菌に有効な次世代抗菌剤の創製につながることが強く期待される.
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研究実績の概要 |
多剤耐性菌の出現と蔓延は世界中で社会問題となっている.特にカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE),カルバペネム耐性緑膿菌,カルバペネム耐性アシネトバクターなどの多剤耐性グラム陰性菌による感染症は,治療法が限られており早急な対策が求められている.我々は既存のアミノグリコシド抗生物質の多剤耐性グラム陰性菌に対する活性を精査する過程で,16S rRNAメチル化転位酵素産生菌がbutirosin Bに感受性を示すことを見出し本研究を開始した.16S rRNAメチル化転位酵素産生菌がbutirosin Bに感受性を示すメカニズムを解明できれば,次世代のアミノグリコシド抗菌剤の設計に大いに役立つと考えられる.一方,類似の化学構造を有するribostamycinは本耐性菌の大部分に無効である.Butirosin Bとribostamycinの化学構造を比較すると構造的な違いは,1位アミド側鎖の有無のみである.そこで我々はribostamycinの1位アミノ基の近傍が16S rRNAメチル化転位酵素産生菌の標的結合部位と相互作用していると考え,1位アミノ基に対して種々の置換基の導入を試みた.その結果ribostamycinの1位アミノ基を修飾した誘導体が16S rRNAメチル化転位酵素産生菌に抗菌力を示した.これらの知見に対して計算化学的な解析を試みており,RNAの標的部位との相互作用の予測からより良い誘導体が創製できないか検討している.またButirosin Bとribostamycinの構造活性相関研究を推進する過程において,通常とは異なる化学構造のアミノグリコシドであるapramycinから誘導されたaprosamine誘導体が16S rRNAメチラーゼ産生耐性菌に対して優れた抗菌活性を示すことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き多剤耐性グラム陰性菌に有効なアミノグリコシド抗菌剤の合成的探索を実施した.カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)の多くは現在臨床で使用されているほぼ全てのアミノグリコシドが無効となる16S rRNAメチル化転位酵素を産生する.本酵素はbutirosin Bに感受性を示しており,その科学的な理由の解明を目指した構造活性相関研究を実施した.その結果butirosin Bと化学構造の類似しているribostamycinの1位アミノ基への適切な置換基の導入が16S rRNAメチル化転位酵素産生菌への活性発現に重要であることが明らかになりつつある.しかしながらbutirosin Bの有するアミド側鎖より優れた化学構造の設計,合成には至っていない.計算的なアプローチによりribostamycinの1位近傍と,RNAの標的部位との相互作用,16S rRNAメチル化転位酵素産生菌に対する活性の関係の解析を試みているものの,アミノグリコシドの複雑な化学構造のため計算手法の確立に時間を要している. 最近研究代表者は比較的単純な化合物に対するIn silicoアプローチにより,がん免疫療法の有望な標的と考えられているキヌレニン産生を抑制する化合物の構造活性相関の論文を発表した(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2024, 106, 129731).本論文で用いたIn silico解析の手法はアミノグリコシドを基盤とした創薬研究においても応用できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
我々はribostamycin,butirosin Bの構造活性相関研究を実施しており,16S rRNAメチル化転位酵素産生菌に有効なribostamycin及びbutirosin B誘導体を得ている.今後はこれらの結果を論文にまとめる計画である.Ribostamycinの1位修飾により,その誘導体が16S rRNAメチル化転位酵素産生菌へ活性を示す理由は解明できていない.現時点ではこれらの活性発現の要因の一つとして,ribostamycinの1位に導入した側鎖近傍とRNAの標的結合部位の間における静電相互作用を考察しており,この仮説をもとに計算的なアプローチによるメカニズムの解明を試みる. 昨年我々は16S rRNAメチル化転位酵素産生菌へ有効性を示すaprosamine誘導体に関する論文を報告した(ACS Infect. Dis. 2023, 9, 886-898).Ribostamycin,butirosin B,aprosamineは全て2-deoxystreptamineを共通の化学構造として有しており,aprosamine誘導体における構造活性相関のIn silico解析がribostamycin,butirosin Bの研究へ応用できるのではないかと考えている.
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