研究課題/領域番号 |
20K06987
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高木 達也 大阪大学, 大学院薬学研究科, 特任教授 (80144517)
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研究分担者 |
田 雨時 大阪大学, 大学院薬学研究科, 助教 (60761252)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | シフト検定法 / Chk1阻害剤 / FMO / IFIE / 重回帰分析 / PLS / 化学記述子 / 部分最小二乗法 / PIEDA / 正準相関分析 / Machine Learning / Computational Chemistry / United Learning / Supervised Learning / Drug Design |
研究開始時の研究の概要 |
統計解析手法と機械学習法を理論化学へ応用する研究は、国内外で次第に広がりを見せており、例えば、W. Liらによる機械学習によって密度汎関数法(DFT)による相互作用エネルギー計算の輔弼を行う研究がある等、重要な研究成果も少なくない。 しかしながら多くは理論計算の補助的な使用であったり、力場の作成、量子化学計算の一部の代用等である。本研究計画では、SBDDを目的として、化学記述子とFMO計算によるIFIEの値を最初個別に使用して回帰を行い、次に両者を本格的に合体させることにより、一種の相関性を考慮した複合事前学習付き教師あり機械学習を実現、予測精度だけでなく、「中身の分かる」医薬品設計に資する。
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研究実績の概要 |
パンデミックの影響がまだ抜けきらず、学会発表がほとんどできなかったのが残念だが、研究そのものはほぼ順調に推移している。今後、シフト検定法の有用性を中心に学会発表することを考えている。 本年度の目標は、シフト検定という独自の手法を、実際のFMO計算結果に応用し、その有用性の検証を前年のモデル計算から発展させることにある。 シフト検定法というのは、元来数理言語学で用いられたものを代表者が改良したもので、回帰の過程で記述子の対応をずらす手法で、対応がずれた記述子は本来回帰に重要な意味を持たなくなるため、もし当該記述子が重要であるならば回帰結果は大幅に悪化する筈である。逆に、悪化しない場合は、その記述子が重要でないことを示している。Permutation法の変形ともいえるが、Permutation法と異なるのは、偶然にも対応が取れてしまうケースが全く存在しないことと、遥かに短時間で結果が得られ、また、図示することにより結果が視覚化できることがあげられる。 本年度は細胞周期のDNA障害チェックポイントで働くChk1の阻害剤のFMO計算結果をFMODDデータベースからダウンロードし(課題代表者もFMODD研究グループの一員である)、検証に用いた。多くのがん細胞では、DNA障害チェックポイントの経路であるATM-Chk2-p53経路が機能不全を起こしている一方、ATR-Chk1-Cdc25A経路が亢進している。後者を阻害すればがん細胞における抗がん剤や放射線治療によるDNA障害の修復を阻害でき、細胞死を誘導できると考えられることから、Chk1阻害剤の研究が進んでいる。 シフト検定法と、化学空間と生物空間の合体法による線形回帰より、R=0.750(IFIEとの単純回帰ではR=0.701)と改善が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果そのものは全く順調に推移している。ただ、パンデミックの影響がまだ抜けきらず、感染状況も大きく変化していないため、成果を学会で発表する機会を設けることが簡単でなかったため、どうしても我流化している恐れを払拭できない。次年度は構造活性相関シンポジウムなどで積極的に成果発表を行い、種々意見交換をして更なる改良につなげたい。
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今後の研究の推進方策 |
シフト検定法によって、重要な記述子、残基の抽出は成功裏に終わったと考えている。IFIEという生物空間の情報と2D記述子という化学記述子空間(以下、化学空間)の情報を同時に用いることにより予測結果が改善できることも目途がついたと考えている。 今後は、しかし、化学空間、生物空間、互いにもう一方の空間から受ける影響を最小にしながら用いることで、pIC50の予測を行う新たな手法を検討することである。なおここで言う生物空間の情報とは、IFIEによって示されるタンパク質と基質の相互作用の情報を、2D記述子が示す化学空間の情報と対比的に表現したものである。過去にもこれら二種の情報のどちらかから活性予測を行う研究はあったが、これらを同時に使う手法は希少である。この手法であれば、エントロピー変化に関わる情報を担う可能性がある化学記述子をIFIEと同時に用いることで、この問題を解決する効果が期待できる。しかしながら、単純に線形回帰を行ったのでは生物空間の係数は化学空間の影響を払拭できず、その逆もまた真である。この為、もう一方の空間の影響を最小にする回帰分析の開発が重要になってくる。 IFIEと2D記述子を用い、活性予測と変数選択を行うための新規手法を検討する本研究は、創薬コストの削減や新たな構造展開に繋がると考えられる。
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