研究課題/領域番号 |
20K07054
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
山田 剛 帝京大学, 付置研究所, 准教授 (80424331)
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研究分担者 |
鈴木 章一 帝京大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40253695)
矢口 貴志 千葉大学, 真菌医学研究センター, 准教授 (60361440)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 皮膚糸状菌 / 皮膚真菌症 / プロテアーゼ / 生体防御回避 / 整体防御回避 / 白癬 / 白癬菌 / 病態形成メカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
白癬菌の感染によって起こる白癬の病態形成メカニズムは今なお不明な点が多い。白癬菌は角質層内に侵入・増殖して病態を形成することから、本菌による白癬の病態形成メカニズムにおけるプロテアーゼの重要性が長らく議論されてきた。この点について、申請者は「白癬菌は多様なプロテアーゼを産生し、角質層を効率良く分解しながら生体内への侵入を進める一方、菌由来のプロテアーゼが宿主の生体防御機構を制御(抑制)するサプレッサーのような働きをすることで、宿主による排除の仕組みを巧みに逃れ、角質層内での持続的な発育を維持しているのではないか?」という1つの仮説を立てた。本研究を通じて、この仮説の検証を進める。
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研究実績の概要 |
白癬の原因菌である皮膚糸状菌(以下、白癬菌)が表皮角質層に侵入・増殖し、病態を形成するメカニズムに、本菌が産生する多様なプロテアーゼが関与しているものと想像される。特に、細胞外に分泌されるプロテアーゼや細胞表面に局在するプロテアーゼの中には、角質層の効率的な分解と内部への侵入に深く関与している可能性がある。ところが、このようなプロテアーゼの中で角質層内部への効率的な侵入プロセスとの関連性が示されたものは少なく、白癬の病態形成メカニズムにおける白癬菌の分泌型プロテアーゼの役割に関する明確な答えは今なお得られていない。一方、申請者らは白癬菌の菌糸から調製した細胞抽出液が表皮ケラチノサイトに与える影響を解析し、「白癬菌由来のプロテアーゼが宿主の生体防御機構を制御(抑制)するサプレッサーのような働きをすることで、角質層内での菌の持続的な発育を維持しているのではないか?”」という仮説を導き出した。白癬菌由来プロテアーゼに関する上記2つの疑問・仮説に対する何らかの知見を得るべく、解析に取り組んできた。 令和5年度は、「白癬の病態形成メカニズムにおける菌由来の分泌型プロテアーゼの役割の解明」に焦点を絞った解析を行った。特に、再構成ヒト培養表皮に対する分泌型プロテアーゼ欠損株の感染形態の解析を通じて、セリンプロテアーゼに分類されるSubtilisin familyの1つ、Subtilisin6(Sub6, ARB_05307)が欠損すると、1. 角層表面への胞子の接着能力が低下する、2. 角層内への菌糸の侵入能力が低下する、以上2つの可能性が見出されたことを受け、再構成ヒト培養表皮への菌の感染形態に対するSub6の影響について詳細な検証を行うと共に、マウスを用いて構築された動物感染モデルを用いたSub6欠損株の感染実験を実施し、病態の経時変化の解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究開始当初、1. 白癬の病態形成メカニズムにおける白癬菌由来の分泌型プロテアーゼの役割に関する新たな知見を得る、2. 白癬菌が角質層内で持続的に発育するための菌由来プロテアーゼを介した宿主の生体防御機構の抑制システム(プロテアーゼによる宿主の免疫応答回避機能)の可能性に関する知見を得る、これら2つを目標に、菌が産生するプロテアーゼの解析を進める予定であった。目標1については、前年度(令和4年度)にin vivoで遺伝子の高発現が確認(報告)された10個の分泌型プロテアーゼを1個から全て欠損させた変異株の幾つかを用いて、再構成ヒト培養表皮に対する感染形態の解析を行ない、Sub6が欠損すると、1. 角層表面への胞子の接着能力が低下する、2. 角層内への菌糸の侵入能力が低下する、以上2つの可能性が見出された。これらの結果を受け、令和5年度はSub6に焦点を絞り、再構成ヒト培養表皮への感染実験、そして動物感染モデルを用いた感染実験を実施し、Sub6の欠損によって生じる菌の感染形態や病態の経時変化に対する影響の詳細な検証を行った。 一方、目標1に関連する解析に多くの時間を費やしたこと、そして長引く新型コロナウイルス感染症の影響により、2つ目の目標である白癬菌由来プロテアーゼを介した宿主の免疫応答回避機能の可能性に関する知見を得るために計画していた「白癬菌の菌糸から調製した細胞抽出液による表皮ケラチノサイト(培養細胞)の細胞死の様式(ネクロシス又はアポトーシス)を検証するための種々の解析」を令和5年度に実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和6年度は、「白癬の病態形成メカニズムにおける菌由来の分泌型プロテアーゼの役割の解明」に焦点を絞った解析をさらに進めていく。特に、再構成ヒト培養表皮に対する分泌型プロテアーゼ欠損株の感染形態の解析を通じて、Sub6が欠損すると、1. 角層表面への胞子の接着能力が低下する、2. 角層内への菌糸の侵入能力が低下する、以上2つの可能性が見出された点を踏まえ、Sub6欠損株について、再構成ヒト培養表皮への感染モデル(in vitro)と動物感染モデル(in vivo)を用いて、in vitroおよびin vivoにおける菌の感染形態と病態の経時変化、その他のSubtilisin family遺伝子の発現量の変化、宿主細胞側の免疫応答などのより詳細な解析データを得る。そして、得られたデータを論文等にまとめる他、所属学会等での成果報告を行う。
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