研究課題/領域番号 |
20K07055
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
川本 善之 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (10410664)
|
研究分担者 |
上野 有紀 愛知学院大学, 心身科学部, 准教授 (20388060)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | メラニン / 炎症性腸疾患 / イカスミ / IBD |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、黒色天然色素のメラニンが、マスト細胞と炎症性マクロファージいずれの活性化も強力に抑制することを独自に発見した。このメラニンは独自に開発した水溶解性の合成メラニン、およびイカスミを加工して抽出したものを用い、天然のメラニンと区別して「活性メラニン」と名付けた。本研究は炎症性腸疾患(IBD)マウスモデルを用いて、活性メラニンを投与し、その効果を実証するとともに制御メカニズムを解明することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(IBD)は最近の研究から、免疫細胞のマスト細胞と炎症性マクロファージが深く関与していることが示されている。我々は独自に合成した水溶解性メラニンが、マスト細胞とマクロファージの活性化をいずれも強く抑制することを見出している。本研究では、マスト細胞やマクロファージを効果的に抑制する、分子量サイズを一定範囲に限定して調整したものを「活性メラニン」と定義し、メラニンを多量に含むイカスミを含め、IBDモデルに対してその効果を検証・実証するとともに、制御メカニズムを解明することを目的として、研究を進めている。 これまで、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)による潰瘍性大腸炎(UC)誘導を検討した。まず、培養細胞レベル、動物レベルにおいて活性メラニンの毒性評価やDSS誘導性UCの発症、悪化抑制効果の有無について検証を進めた。すなわち、ヒト結腸癌由来の細胞株Caco-2に対し、活性メラニンは顕著な細胞毒性を示さず、また、マウスへ活性メラニンを経口ゾンデ投与したところ、体重変化や死亡といった明確な変化は確認されなかった。一方、マウスの大腿骨より骨髄細胞を採取し、M-CSF添加培地で培養して活性化したマクロファージに対してLPSを処理すると、マクロファージはCCL-8を発現するが、活性メラニンはその発現を有意に抑制することを確認した。その上で、2%DSSの自由摂取によるUCを誘導し、活性メラニンおよびイカスミを、経口ゾンデを用いて投与し、抗UC効果を検証した。その結果、活性メラニンおよびイカスミはいずれもDSSによる大腸収縮を有意に抑制することを見出した。大腸の病理組織解析を進めたところ、マスト細胞浸潤に顕著な影響は見られなかったが、マクロファージの浸潤が活性メラニン投与群で抑制される傾向が見られた。現在、イカスミ投与群での病理切片解析や炎症性サイトカイン産生への影響について解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
UCモデルにおいては当初、マウスへのDSS飲水投与を2.5%で検討したところ、陰性コントロールに比べて陽性コントロールでは有意な大腸長の退縮が見られたが、陽性コントロール群と比較して活性メラニン群では大腸長の退縮抑制傾向がみられたものの有意差を得るには至らなかった。そこで、DSS濃度を2%としたところ、陽性コントロール群と活性メラニン投与群間において有意差を得ることができた。病理組織解析では、HE染色によるリンパ球の浸潤やPAS染色による粘液染色を行い、活性メラニンによる大腸長退縮抑制効果を補完する結果を得た。さらに、F4/80陽性マクロファージの浸潤が抑制されている傾向が新たに見出された。一方、マスト細胞については顕著な浸潤が確認できなかった。今回、イカスミ投与による抗IBD(UC)効果を進めたところ、合成メラニンの効果と同様に、2%DSS誘導性腸収縮の抑制が確認できた。他のIBDモデルであるTNBS誘導性クローン病(CD)モデルをもちいて検証したところ、活性メラニンによる抑制効果は見られなかった。現在、イカスミ投与群の腸組織解析や炎症性サイトカイン産生への影響について解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、潰瘍性大腸炎(UC)モデルの病理組織学的解析をさらに進め、炎症性サイトカインの有無、制御性T細胞、M1/M2マクロファージの存在の有無等について、リアルタイムPCRや病理的組織解析などにより詳細に調べる予定である。他のIBDであるクローン病(CD)モデルを用い、合成した活性メラニンによる抑制効果が認められなかったことから、活性メラニンはTh1やTh17を介する疾病の抑制には寄与せず、Th2型疾患の抑制に寄与する可能性が示唆される。この観点から、Th細胞に着目し、引き続き分子メカニズムの考察と解析を進める。さらに、マウス骨髄細胞をM-CSFで刺激した初代培養細胞を用い、活性メラニンによるLPS炎症応答の抑制メカニズムを解明するため、RNAseqまたはDNAマイクロアレイ解析を予定している。
|