研究課題
基盤研究(C)
肺動脈性肺高血圧症は、肺血管の障害によって、持続的に肺動脈圧が上昇する致死性の難病である。我々は、カルシウム感受性受容体と血小板由来増殖因子受容体の発現機能亢進が肺高血圧症の病態形成に関与すること、また、それらの拮抗薬が肺高血圧症モデル動物の病態を改善することを明らかにしてきた。本申請課題では、それらの下流シグナル経路を明らかにし、肺動脈性肺高血圧症の病態機構の解明や新規治療薬の開発につなげる。
肺高血圧症は肺血管障害によって肺血管抵抗が増加し、持続的に肺動脈圧が上昇する致死性の循環器・呼吸器疾患である。肺高血圧症臨床分類の第1群であり、難病に指定されている肺動脈性肺高血圧症(指定難病86)は、肺血管の攣縮(過収縮)やリモデリング(肥厚、線維化、炎症)によって起こる。これらの病態形成には、各種シグナル分子の異常や細胞内カルシウム濃度の持続的な上昇が関与していることが知られている。これまでに、肺動脈平滑筋細胞に発現し、細胞外カルシウム濃度を感知するカルシウム感受性受容体の発現増加が、肺動脈性肺高血圧症の肺血管リモデリングに関与していることを明らかにした。また、肺動脈性肺高血圧症患者で血中濃度が増加する血小板由来増殖因子が、カルシウム感受性受容体の発現を亢進することも明らかにした。さらに、肺動脈性肺高血圧症患者由来の肺動脈平滑筋細胞では、Rhoキナーゼ2が発現亢進し、過剰な細胞増殖に寄与していることも示した。本年度は、カルシウム感受性受容体や血小板由来増殖因子シグナル、Rhoキナーゼ2の下流で機能する新たなシグナル分子群の探索を実施した。その結果、肺動脈性肺高血圧症患者由来の肺動脈平滑筋細胞において、Hippoシグナルが過剰な細胞増殖に関与し、肺動脈性肺高血圧症の肺血管リモデリングに寄与していることが明らかになった。さらに、その上流でカルシウム感受性受容体や血小板由来増殖因子シグナルが機能制御することも見出した。本研究成果は、肺動脈性肺高血圧症の病態形成メカニズムの解明や新規治療薬を開発する上で有益な知見であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した本年度の計画に沿って、実験をおおむね順調に進めることができた。また、その研究成果を学術論文や学会で発表することができた。
これまでに、肺動脈性肺高血圧症患者や肺高血圧症モデル動物由来の肺動脈平滑筋細胞において、カルシウム感受性受容体や血小板由来増殖因子シグナル、Rhoキナーゼ2の発現増加が肺血管リモデリングに関与することを明らかにしてきた。しかしながら、その発現増加の分子メカニズムについては、不明な点が多い。本年度、カルシウム感受性受容体や血小板由来増殖因子シグナル、Rhoキナーゼ2の下流シグナル経路として同定したHippoシグナルに着目して、それらの発現調節機構の解明を進める。
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