研究課題
基盤研究(C)
現代人を蝕む睡眠不足は、心身の疲労や事故の可能性につながるほか、がんや認知症などの発症リスクを高めることが知られています。睡眠問題への対策として私たちは、植物や天然資源から抽出した精油の芳香成分を利用する治療法「アロマセラピー」に注目しました。アロマセラピーは体系化された治療法にも関わらず、良質で客観的な研究データが不足しているため、現代医学では補助的な役割(補完・代替医療)に位置づけられています。そこで私たちは「アロマセラピーにはどのような、どれくらいの睡眠促進/睡眠異常改善効果があるのか?」を研究課題としました。その解明を通じて、睡眠医療におけるアロマセラピーの有用性の確立を目指します。
本研究では、アロマセラピーで用いられる精油の吸入曝露が睡眠に及ぼす影響について、客観的、定量的に解析することを目指した。具体的には精油の吸入曝露がマウスの睡眠に及ぼす影響を脳波、または脳内の神経活動性に及ぼす影響として評価した。その結果、1)ベルガモット精油の吸入曝露により入眠潜時が短縮した。2)スイートオレンジ精油の吸入曝露は、0.25%の濃度でレム睡眠の増加と覚醒の減少、1.0%の濃度で入眠潜時の短縮をもたらした。3)いずれの精油も覚醒を司る脳領域である青斑核の神経活動性を減弱させた。本研究知見から、精油吸入の睡眠促進作用についての客観的エビデンスの一部を確立するという目標を達成した。
現代のストレス社会や睡眠時間の質・量の低下という課題に対して、いわゆる健康食品をはじめとして様々な解決策が提案されている。本研究は、経験的に用いられているが科学的な根拠に欠けるアロマセラピーの睡眠促進効果について、実験データに基づく基礎的エビデンスの一端を提供するものである。今回得られた成果の活用例として、アロマセラピーを生業とするアロマセラピストのような有資格者の業が質的に保証されるほか、緩和医療や介護施設といった臨床現場でのアロマセラピー応用にもつながっていくことが期待される。
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