研究課題/領域番号 |
20K07137
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 小夜 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (90424134)
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研究分担者 |
中村 智徳 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (30251151)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 胆汁酸 / がん / スペシャル・ポピュレーション / 薬剤反応性 |
研究開始時の研究の概要 |
個々の患者の薬剤反応性に基づく治療の個別化は、がんの治療成績向上、患者の生活の質向上に不可欠である。本研究では、近年、がん細胞の生存と遺伝子レベルでの関わりが注目されている胆汁酸に着目し、例えば肝機能障害など血液中の胆汁酸が上昇するような病態が、がん細胞の増殖や抗がん剤反応性に与える影響、そのメカニズムについてがん細胞やがん細胞移植動物を用いて検討する。これにより、患者個々の病態に合わせた適切な抗がん剤の選択、効果的かつ安全ながん薬物治療の実現を目的とする。
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研究実績の概要 |
特別な背景を有する患者、即ちスペシャル・ポピュレーションは新薬開発時に臨床試験の対象とならないため、実臨床では承認時情報に加えて個々の患者の臨床症状やリスク・ベネフィットを考慮した薬剤の使用が求められる。我々は、遺伝子の転写発現調節を司る生理活性物質として注目されている胆汁酸に着目し、胆汁うっ滞型肝障害や肝外胆管の閉塞等、実臨床で観察し得る胆汁酸濃度上昇が、がん細胞の増殖及び抗がん剤感受性に及ぼす影響と機序の検討を目的としている。 2020、2021年度は、ヒト乳がん細胞株を用いたin vitro実験により細胞増殖に関わる複数遺伝子発現が胆汁酸曝露後に細胞増殖促進方向に発現変化することを見出し、2022年度は胆管結紮による胆汁うっ滞・担がんマウスモデルの作製と抗がん剤ドキソルビシン(DXR)の抗腫瘍効果への影響についての検討を行ったが、マウスモデルの改良が必要であった。 2023年度は胆汁うっ滞マウスモデルの改良を行った。具体的には、結紮方法を改良した胆管結紮、胆汁酸投与の2種類の胆汁うっ滞マウスを作製し、全身状態及び血液中胆汁酸濃度を評価した結果、改良胆管結紮モデルで進めることとした。BALB/cAnNCrlCrljマウスにマウス乳がん細胞株4T1細胞を移植し、コントロール(胆管非結紮、DXR非投与)群、DXR 8mg/kg投与(胆管非結紮)群、胆管結紮(胆汁うっ滞、DXR非投与)群、胆管結紮(胆汁うっ滞)+DXR 8mg/kg投与群の4群にて移植後day 23における腫瘍体積(平均値)を比較した結果、胆管非結紮時にはDXR非投与群と比較してDXR投与群で約29%縮小していた。一方、胆管結紮(胆汁うっ滞)時には、DXR非投与群と比較してDXR投与群のほうがむしろ約11%増大しており、胆汁うっ滞状態がDXRによる抗腫瘍効果の減弱もしくは腫瘍増殖能の増大をもたらすことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、胆管結紮による胆汁うっ滞マウスモデルを作製し、胆管非結紮群ではDXR投与群における腫瘍体積が生食投与群よりも縮小する一方、胆管結紮群ではDXRの腫瘍増殖抑制作用が減弱する可能性が示されていた。しかし、これらのマウスモデルの胆管結紮群では体重増加が見られないなど胆汁うっ滞以外の要因が実験結果に影響している可能性を排除できなかった。これにより、2023年度はさらにマウスへの負担の少ない胆汁うっ滞マウスモデルの改良から取り組んだ。具体的には、2020年度及び2021年度に実施した in vitro 実験においてDXR抗腫瘍効果に影響することが示されたケノデオキシコール酸を投与する方法、及び胆管をさらに緩く結紮する方法の2種類を検討し、加えてこれらマウス血液中の各種胆汁酸濃度を測定し、胆汁うっ滞状況を評価して検討した。その結果、最終的に胆管をさらに緩く結紮する方法でのモデル作製に決定した。これにより、2023年度は改良した胆汁うっ滞マウスモデル作製により、あらためて胆汁うっ滞状態が抗がん剤DXR投与時の抗腫瘍効果に及ぼす影響について検討したため、やや遅れている状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施した胆管結紮による胆汁うっ滞マウスモデルによるin vivo実験において採取した血液検体及び摘出腫瘍組織を用いた評価を行う。具体的には血液中の各種胆汁酸成分の濃度を測定し、腫瘍体積の増減と比較解析することにより、胆管結紮時、即ち胆汁うっ滞状態時におけるDXRの抗腫瘍効果減弱もしくはDXRによる抗腫瘍効果を上回る腫瘍増殖促進作用等と関連する候補胆汁酸分子を抽出する。この候補胆汁酸分子が生理活性物質として細胞増殖や薬剤感受性に関わるシグナル伝達等の関連分子について検討する。
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