研究課題/領域番号 |
20K07251
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 (2022-2023) 慶應義塾大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
北澤 彩子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10535298)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 大脳新皮質錐体細胞 / 海馬CA1錐体細胞 / 細胞移動 / 細胞移植 / 子宮内胎児脳電気穿孔法 / 放射状グリア線維 / Cux / 子宮内胎仔脳電気穿孔法 / マイクロアレイ / Cux遺伝子 / スライス培養 / ピューロマイシン / クライミングモード / 異所移植 |
研究開始時の研究の概要 |
脳発生期の海馬CA1錐体細胞移動の異常は高次脳機能障害への関与が指摘されているが、発生場所から目的地に移動するまでの詳しい機構がよく分かっていなかった。本研究では、マウス海馬CA1錐体細胞で見出した新規移動様式‘クライミングモード’の特徴的な動態を決定付ける要因の解明を目的としている。移動細胞を可視化するための子宮内胎児脳電気穿孔法やタイムラプスによる細胞移動の画像解析、さらには、細胞の異所移植や遺伝子発現解析などの手法を用いて、足場として知られている放射状グリア線維への接着に対する変化などを、移動機構の類似性が報告されている大脳新皮質錐体細胞の‘ロコモーション’と比較することで解明する。
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研究実績の概要 |
マウス大脳新皮質および海馬CA1錐体細胞の移動メカニズムを制御する因子の探索を行った。昨年度、移動中の両錐体細胞に対しマイクロアレイ分析を行った結果、発現量に差がある遺伝子(FC>10)を69個抽出したがその中で我々はCux1及びCux2に注目した。Cuxは大脳新皮質錐体細胞の上層ニューロンマーカーとして、また転写因子として知られている。子宮内胎児脳電気穿孔法を用いて大脳新皮質錐体細胞においてCux1/2を機能欠損した結果、錐体細胞の移動が正常に行われず、またクライミングモードの様に先導突起の数が増えた。一方、海馬CA1錐体細胞へCux1/2を過剰発現させた場合、ロコモーションに似た双極性の形態に変化した。Cux1のアイソフォームには転写活性を持たないものもあるため、核移行部位を除去したCux-ΔHDプラスミドを作製し過剰発現させた結果、前述した様な形態変化は見られなくなった。 次に、Cux1/2を過剰発現させた海馬CA1錐体細胞を、大脳新皮質の錐体細胞層へ異所的に移植した結果、従来の異所移植では大脳新皮質領域において正常な移動を行わない海馬CA1錐体細胞が、僅かながらロコモーションモードのように移植部位から脳表面方向へ勢いよく移動する様子が観察された。以上の結果から、Cuxが大脳新皮質と海馬CA1の移動様式の違いを生じる分子スイッチであることを示した。 発生期の海馬CA1領域に存在する放射状グリア線維の立体構造を再構築するため、昨年度、透明化した脳を撮影した画像の処理を行った。結果として細胞体から伸長している放射状線維は胎生15日頃には、途中で大きくカーブを描きつつ、その終着点は大脳新皮質領域の放射状グリア線維とは異なり、細胞体のより後部に存在することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、マイクロアレイの解析結果からCuxを見出し、この遺伝子が大脳新皮質錐体細胞のロコモーションモードに必要であり、海馬CA1錐体細胞のクライミングモードをロコモーションモードのように変化させ、大脳新皮質錐体細胞層を移動するに十分な働きを持つことを見出した。論文作成を行い投稿する際に申請者が産休を取得したため昨年度中に論文投稿が実現しなかった。産休後すぐに職場復帰したが予定よりも進行は遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(延長)であるため、マウス大脳新皮質および海馬CA1錐体細胞の移動様式を制御する因子としてCux遺伝子を同定した結果を論文として発表する。論文投稿にあたり、追加実験が必要となる場合が考えられるため、随時必要な研究を行う予定である。また、論文発表と並行して、これまで得られた結果を積極的に学会などで発表する。 胎生15.5日目のCA1領域の放射状グリア線維の三次元構造をおおよそではあるが明らかにすることができた。この複雑な形状がこの時期特有のものであるのか、あるいは発生過程で生じたものであるのかを検討するために、発生時期の早い段階での三次元構築を試みたいと考えている。
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