研究課題/領域番号 |
20K07274
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河合 喬文 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70614915)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 精子 / VSP |
研究開始時の研究の概要 |
申請者はこれまでに、精子が他の細胞種とは異なり独自の膜電位感知機構(電位依存性高k素活性)を有していることを示唆するデータを得ている。しかし上記の膜電位感知機構については未だ不明な点が多く、とりわけ膜電位の感知が精子形成のどの段階で行われるのか、また精子内のどの領域で行われるのか、などの時空間的な詳細は明らかになっていない。本研究ではこの点を明らかにすることで、従来想定されてこなかった膜電位シグナルの新たな側面について明らかにする。
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研究実績の概要 |
電位依存性ホスファターゼVSPは、電位センサードメインを有するにも関わらず通常の電位依存性イオンチャネルとは異なってイオンチャネル活性を示さず、代わりに電位依存性酵素活性(ホスファターゼ活性)を示すという興味深い分子である。この精子特異的に発現している電位依存性ホスファターゼVSPについて、私はこれまでにマウスを用いてその精子における機能を解析し、これが精子の運動性の制御に関わることを明らかにしてきた。本研究では、このようなVSPによる精子における活性が、どのように形作られるのかについて、精子の成熟過程(時間的要素)や、精子内の局在(空間的要素)を考慮しながら、進めていた。その結果、時間的要素については、様々な成熟段階にある精子を野生型或いはVSP欠損型のマウスから収集し、そのイノシトールリン脂質の量を比較することで、この点を解析することに成功した。様々な成熟段階にある精子については、フローサイトメトリーや遠心による分画を組み合わせることによって分離を行った。その結果、VSPの活性について、成熟過程に応じて異なる結果が得られ、その活性が精子の成熟と密接な関わりを持つことが示唆された。 またマウスのVSPについて生理機能に関する詳細な解析結果が示されてこなかったという問題があった。これは、次項に示す通り、マウスのVSPが発現実験系では細胞膜へ上手く輸送されないという問題を抱えていたためである。そこで、この問題を克服するため、様々な変異実験を行い、大きな進展を得られることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、精子の成熟過程に着目することで、精子の成熟状態に応じたVSP活性について、これまでに見出されてこなかった現象を見出すことが出来た。この過程では各成熟状態の精子を適切に採取するところが難しい点であったが、適切な遠心分離による条件を検討すること、並びにフローサイトメトリーによってDAPIによる蛍光を検出することで、適切にこれらを分離することに成功した。 また、これまでVSPについては、ホヤやサカナ、ニワトリなどの非哺乳類においてのみその性質が詳しくわかっており、哺乳量ではその分子機能の解析が詳しくなされていないという問題があった。その理由の一つとして、哺乳類のVSPは発現細胞系で実験を行うとうまく細胞膜へと輸送されないという問題があったためであって。この問題を克服するため、私はマウスのVSPの構造に様々な工夫を凝らし、細胞膜へと上手く発現させることに成功した。また、その電位依存性についても詳細に検証することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今回観察された精子の成熟過程に応じたVSP活性の違いについて、膜電位とのかかわりについてより詳細に解析を行っていく。これを可能とするため、膜電位感受性を変化させたVSPを発現する点変異マウスを作製し、これらのマウスにおいてVSPの酵素活性が変化しているのかについて検証を進めたいと思っている。一方で、このような検証を行うためには実際にマウスVSPにおいて電位依存性がどのようになっているのかという点と、どのアミノ酸を変化させることでその電位依存性がシフトするのかという点を実験的に証明する必要がある。前述の通り、私はすでにマウスVSPを細胞膜に発現させる実験系を見出すことに成功したので、この実験系を用い変異実験を行っていくことで、まずは電位依存性をシフトさせられるアミノ酸部位を同定する。この情報を基に遺伝子改変マウス(点変異マウス)を作製し、このマウスについて様々な成熟状態の精子を準備することで、VSPの膜電位依存性と精子の膜電位との関わりをより詳細に解析していく予定である。
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