研究課題
基盤研究(C)
将来のオーダーメイドがん治療の実現に向け、がんの多様性に合わせた多様な治療手段の開発が求められている。研究代表者らは最近、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)によるプロテインキナーゼC(aPKC)の恒常的な活性化が、がん細胞のアポトーシス抵抗性のトリガーとなることを見出した。この発見は、S1P-aPKCシグナルの抑制によりアポトーシスのブレーキを外す新しいタイプのがん治療法の創出が期待できることを意味する。そこで本研究では、細胞ストレス下でのアポトーシス抵抗性とS1P-aPKCとの関係を分子レベルで解明し、さらにS1P-aPKC間相互作用のメカニズムを構造ベース創薬に資するレベルで明らかにする。
本研究では、癌細胞のアポトーシス抵抗性におけるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)-非典型プロテインキナーゼC(aPKC)シグナリング制御の全容解明に向け、S1P-aPKCの下流シグナルおよびストレスとの関係を明らかにし、さらにS1P-aPKC活性化機構の構造学的分子メカニズムの解明を目指した。その結果、S1PによるaPKC活性化の新たな分子メカニズムとしてaPKCの翻訳後修飾の関与を見出し、またS1P-aPKCシグナリングの下流で働くアポトーシス関連分子として転写因子Xを同定し、さらにS1P-aPKCシグナリングによる癌細胞のアポトーシス抵抗性に関係する新たな飢餓ストレスの同定に成功した。
本研究成果のポイントは、S1PによるaPKC活性化の分子メカニズムとして、翻訳後修飾の関与という全く新たな構造学的知見を見出した点である。本研究の成果により、アポトーシスのブレーキ役としてのS1P-aPKCシグナリングを分子レベルで制御する、新たながん治療法開発の実現に向けて新たな道筋が示された。今後は、S1P-aPKCシグナリングが転写因子Xを活性化しアポトーシスを抑制するシグナル伝達の全容解明を目指すとともに、リード化合物の創出を目指した分子標的創薬の研究を平行して推進する。
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