研究課題/領域番号 |
20K07340
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
茂谷 康 徳島大学, 先端酵素学研究所, 准教授 (70609049)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | STING / ACBD3 / オルガネラコンタクト / 細胞内輸送 / 自然免疫 / ER exit sites / APEX2 / 小胞輸送 / Sec23 / Sec24 |
研究開始時の研究の概要 |
感染や老化、ストレスなどによって細胞質に漏出した病原体や自己由来のDNAは、小胞体に局在する膜タンパク質STINGを活性化してゴルジ体へ移行させ、炎症を惹起する。しかしながら、活性化したSTINGがどのようにしてゴルジ体へ輸送されるのか不明な点が多い。私は、独自に構築したゲノムワイドスクリーニングを実施し、活性化STINGが小胞体に留まる変異細胞を取得した。本研究では、この変異細胞を利用した遺伝学的アプローチと最先端プロテオミクスを組み合わせ、STINGの活性化状態を感知して輸送小胞に取り込む分子を同定する。そして、その選別輸送機構を解明して小胞輸送を標的とした炎症制御法の開発につなげたい。
|
研究実績の概要 |
本研究は、STINGタンパク質の小胞体からゴルジ体への輸送機構を明らかにすることを目的としている。昨年度は近接標識プロテオミクス技術を用いてSTINGタンパク質が小胞体から脱出する過程で近接する分子の探索を行い、ゴルジ体常在性タンパク質ACBD3を同定した。そこで今年度はSTINGとACBD3の局在変化や分子間相互作用に着目し、STINGの輸送機構の解明に迫った。定常状態においてSTINGは小胞体膜全体に広がって存在するため網目状の局在パターンを示す。ところが、リガンドである環状ジヌクレオチドが結合して活性化するとゴルジ体に局在するACBD3と会合し、その結果、小胞体とゴルジ体が接触する特殊な領域に集積し点状の局在パターンに変化した。またACBD3のゴルジ体局在について超解像顕微鏡を用いて詳細に調べたところ、一般的なゴルジ体マーカーであるGM130やgiantinとは共局在しなかった。この結果から、ACBD3陽性の小胞体-ゴルジ体コンタクトサイトはユニークなゴルジ体サブ領域によって構成され、これが輸送経路の特異性を生み出している可能性が示唆された。さらにACBD3の欠損細胞を作製して解析した結果、STINGの小胞体-ゴルジ体コンタクトサイトへの集積とゴルジ体への移行が阻害され、STING依存的な炎症性サイトカイン産生やI型インターフェロン応答が低下した。以上より、ACBD3を介したオルガネラコンタクトサイトの形成によってSTINGのゴルジ体への輸送が駆動されるという新しい輸送機構が明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ACBD3を介したSTINGの輸送機構に関する成果を論文発表することができた。これまでの報告では小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送は輸送小胞を介して行われると考えられており、当初はこの小胞輸送モデルを想定していたが、本研究によって小胞体とゴルジ体の接触領域を介した新たな輸送モデルを示すことができた。さらにACBD3はゴルジ体シス槽に局在すると考えられているが、超解像顕微鏡の結果から、ACBD3は他のゴルジ体シス槽のマーカータンパク質とは異なる領域に局在することがわかった。この成果を発展させることにより、ゴルジ体層板構造が微小サブ領域ごとに区画化される新しい原理の発見につながることが期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
STINGが小胞体-ゴルジ体コンタクトサイトに集積した後、どのようにして小胞体膜側からゴルジ体膜側へ移行するのか、その膜間移行メカニズムはわかっていない。これを明らかにするため、超高速超解像顕微鏡を用いたライブセルイメージングを行う。光安定性の蛍光タンパク質や蛍光色素を用いてSTINGやACBD3をラベル化し、高速撮影による退色を防ぐ工夫をする。またゴルジ体の微小サブ領域を構成するタンパク質や脂質を明らかにするため、ナノ空間内のオルガネラ膜構成タンパク質と脂質を同時に分析することができる独自のナノディスクオーム技術を開発する。
|