研究課題/領域番号 |
20K07344
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山口 洋子 日本大学, 歯学部, 講師 (00239922)
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研究分担者 |
大島 光宏 奥羽大学, 薬学部, 教授 (30194145)
齋藤 朗 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90591412)
山海 直 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 再雇用職員 (80300937)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 生体外歯周炎モデル / 歯周炎関連線維芽細胞 / シングルセルRNA-Seq / コラーゲン分解 / VEGFR阻害剤 / 初代培養細胞 / 初代培養 / 三次元培養 / 歯周炎治療薬 / 3次元培養 / カニクイザル / FLT-1 / 歯周炎治療 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは、歯周炎原因細胞と目される、歯周炎関連線維芽細胞(PAF)を重度歯周炎罹患歯肉から分離し、「生体外歯周炎モデル」を確立した。このモデルの遺伝子発現を調べたところ、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR1)が高発現し、VEGFRキナーゼ阻害剤がこのモデルのコラーゲン分解を顕著に阻害した。しかし、このキナーゼ阻害剤を治療薬に用いると、血管新生阻害という副作用が予想された。そこで本研究では、VEGFR1を特異的にブロックする抗体を用い、モデルでその効果を試すとともに、歯周炎を自然発症したカニクイザルに局所投与してその有効性を調べ、抗体の局所投与による新しい歯周炎治療法を提案したい。
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研究実績の概要 |
申請者らは、歯周組織を構成する歯肉上皮細胞と歯肉線維芽細胞を組み合わせた3次元培養「生体外歯周炎モデル」を構築し、極度のコラーゲン分解を引き起こす歯周炎関連線維芽細胞(PAF)が重度歯周炎罹患歯肉に存在することを発見した。今までにこのモデルを用いてVEGFR1キナーゼ阻害剤がコラーゲン分解を抑制することから、VEGFR1が重要な治療標的候補分子であることを報告してきた。新型コロナ感染拡大による研究環境の制限が生じたことから、当初の研究計画を大きく見直した。歯周組織に存在する細胞群から、歯周炎の成り立ちに関与する細胞を明らかにするため、シングルセルRNA-seq 解析をおこなうこととして準備を重ねてきたが、作年度は試料採取先である施設の倫理申請等に時間がかかり実施することができなかった。ようやく倫理承認が下り、解析の準備を始めたが細胞分離作業を予定していた理化学研究所ではヒト由来の初代培養細胞を用いた作業ができないことが判明した。そこで他所での研究環境を整えるのに時間がかかってしまい、シングルセルRNA-Seq解析を完了することが出来なかった。 シングルセルRNA-Seq解析の準備を重ねている期間に昨年度から検討していた歯周炎患者由来の初代培養細胞で構築した「生体外歯周炎モデル」において、コラーゲン分解を指標に、VEGFR1/2とPDGFRを阻害するマルチキナーゼであるレゴラフェニブを作用させた3次元培養ゲル中の細胞を用いたマイクロアレイ解析の結果、共通して発現上昇または発現低下した遺伝子を見出すことができたことはすでに報告している。しかし、同定できた遺伝子は細胞外マトリックスの構築や創傷治癒の制御に関わる遺伝子が多かったものの、作用機序まで解明できるような遺伝子群を見出すことが出来なかった。このことからシングルセルRNA-Seq解析の結果を合わせて、論文を作成することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染拡大による研究環境の制限および共同研究者が逝去したことから当初の研究計画を大きく見直した。ヒト歯周炎由来細胞を用いたシングルセルRNA-seq解析を行い、歯周炎に罹患することで歯周組織に存在する細胞群にどのような変化が現れるかを検討するためシングルセルRNA-seq 解析をおこなうこととして準備を重ねてきたが、作年度は倫理申請等に時間がかかり実施することができなかった。倫理承認が下りたことから実施に向けてシングルセルRNA-Seq解析のための準備をすすめ、解析のための細胞分離は理化学研究所で行う予定で準備してきた。しかし、検体がヒト由来初代培養細胞であることから理化学研究所の施設を使用できないことが判明した。そこで検討を重ねた結果、東京大学医科学研究所FASCコアラボラトリーで細胞分離を行うべく準備を進めた。現在、テスト段階を経て健常組織由来細胞3症例、疾病組織由来細胞3症例の細胞分離は完了し、シングルセルRNA-Seq解析に入るところである。 また、昨年度行った「生体外歯周炎モデル」に、コラーゲンゲルにレゴラフェニブを作用させた3症例のPAFを用いたマイクロアレイ解析の結果、独立した3症例で共通して発現上昇・低下を示した遺伝子群を同定はできたものの作用機序まで解明できるような遺伝子群を見出すことが出来ず、論文化はシングルセルRNA-Seq解析の結果を待つこととした。
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今後の研究の推進方策 |
これまで「生体外歯周炎モデル」を用いて歯周炎原因細胞(PAFs)は特定できている。また、理化学研究所FANTOM5の協力を得て、PAFsの網羅的転写開始点解析(Cap Analysis of Gene Expression: CAGE解析)は終了しており、研究協力者の堀江(現金沢大学)により、新たな歯周炎の原因候補遺伝子がリストアップされている. 今回、健常および歯周炎由来組織から得られた初代培養細胞のシングルセルRNA-Seq解析により、歯周炎罹患歯肉の単一細胞レベルでの遺伝子発現パターンを同定し、転写レベルでのPAFsの多様性を検証する.ターゲットとなる細胞は絞られているため、すでに得られているCAGEデータとシングルセルRNA-seqデータとを比較すれば、PAFsの成り立ちに迫ることができ、歯周炎のこれまでとは全く異なる視点からの病態解明と新しい治療法の開発が可能となると考えている。 さらに、解析済みのDNAメチル化アレイの結果と比較することで、塩基配列に変異がなくともDNAメチル化修飾によって遺伝子発現が変化することが、PAFsの成り立ちに関与しているかどうかを調べることができる.これら統合解析により、多くの生活習慣病に関与するとされるエピゲノム異常が、歯周炎の病態形成に関与している可能性ならびに歯周炎の発症機序、さらに歯周炎治療薬の標的となる分子の同定を目指している。
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