研究課題/領域番号 |
20K07349
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
Qin XianYang 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (60756815)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 / 脂肪肝 / トランスグルタミナーゼ / エンドトキシン / 微小環境 / マルチオミクス解析 / ホスファチジルエタノールアミン / LIMK1 / in situイメージング / NASH / 膜脂質 / 膜タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
脂肪肝において腸管に由来する細菌性のエンドトキシンの過剰反応が亢進し、非アルコール性脂肪性肝炎の病態を進展させる。炎症刺激に応じて細胞膜脂質の飽和度が増加し、集合状態を変化させ、その中に硬くパッキングされた膜タンパク質を介してシングル伝達を調節し細胞機能を維持する。本申請では、分子間接着因子トランスグルタミナーゼTG2活性化のin vivoイメージング技術とMALDI-TOFMSを用いた脂質in vivoイメージングを活用し、脂肪肝を背景にしたエンドトキシンの過剰反応における膜脂質によるシグナル伝達経路の役割の解明を目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、脂肪肝の微小環境において細菌性エンドトキシン(LPS)誘発性炎症反応並びに非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の発症において分子間接着因子トランスグルタミナーゼ(TG2)の役割の解明を目的とする。本年度は、1)NASH病態STAMマウスと高濃度LPS誘発性炎症マウスにおいて、TG2は肝組織中CD80+F4/80+M1型マクロファージに特異的に活性化されることを見出した。RNA-seq解析を用いて、クロドロン酸内包リポソーム投与によりマクロファージ排除したマウスとTG2阻害剤シスタミン(CTM)投与マウスにおいて、LPS刺激による肝組織中の遺伝子発現変化を比較し、LPS刺激に対する同様な炎症抑制効果を示した。2)ヒト肝がん細胞JHH7とマウスマクロファージ細胞 Raw264.7を用いて、ホスファチジルエタノールアミン(PE)処理によるLPS応答性への影響を検証した。IL-6遺伝子発現はPEの前処理によりLPS刺激に対する反応性が有意に増加した。3)Raw264.7細胞を用いてLPS刺激とTG2活性化の関連性を検証した。Raw264.7細胞においてLPS処理によりTG2の架橋酵素活性と遺伝子・タンパク質発現が有意に増加した。CTMは、LPSによるIL-6やTNFα遺伝子発現の上昇やマクロファージの細胞死が有意に抑制した。さらに、LPSで刺激したマクロファージの培地から得られた上清を用いて、条件培地(CM)を作成した。このCMは正常肝細胞HcのIL-6遺伝子を強く誘導したが、CTM添加により有意に抑制された。これらの結果から、TG2はLPS-TLRシグナルカスケードだけでなく、LPS刺激による分泌されるサイトカインやその下流受容体シグナルカスケード、そして炎症微小環境においてマクロファージと肝細胞との細胞間相互作用にも関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、糖尿病を背景に高脂肪食投与により脂肪肝からNASHを発症するSTAMマウスと低濃度LPS刺激高脂肪食マウスの肝組織を用いたトランスオミクス解析から、肝PE関連膜シグナルリモデリングのトランスオミックスネットワークを構築した。今年度では、細胞培養系を用いて、24時間のPE前処理により、ヒト肝がん細胞やマウスマクロファージ細胞においてLPSに対する炎症反応の増加が確認できた。これにより、脂肪肝の微小環境においてLPSに対する過剰反応の原因の1つが解明された。また、これまで確立したビオチン化ペンチルアミンを用いたTG2活性化のin situ可視化技術を活用し、クロドロン酸内包リポソームを用いたマクロファージの機能欠損解析とRNA-seq解析を用いた遺伝子発現解析と併用し、TG2活性化とCD80+F4/80+M1型マクロファージとの関連性を明らかにした。さらに、動物実験では、マクロファージによってTG2が活性化されたのか、あるいはTG2が活性化した細胞がマクロファージに貪食されたのかは不明でしたが、マクロファージ培養系を用いてTG2とLPS-TLRシグナルカスケード、LPS刺激による分泌されるサイトカインやその下流受容体シグナルカスケード、そして炎症微小環境においてマクロファージと肝細胞との細胞間相互作用との相関性を証明できた。
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今後の研究の推進方策 |
マクロファージ培養系において、TG2活性化とLPSシグナル経路との相関性を明らかにしたが、その分子メカニズムを解明する必要がある。特に、ビオチン化ペンチルアミンを用いたTG2活性化のin situ可視化技術を基に、ストレプトアビジン磁石ビーズを用いた免疫沈降技術と質量分析を用いたプロテオーム解析との組み合わせにより、TG2の架橋酵素活性の基質タンパク質を同定する方法を確認したので、これらの技術を活用し、脂肪肝を背景にLPSに対する過剰反応において、TG2の標的分子を同定する。さらに、これまでの動物実験と細胞実験を用いたTG2の機能解析の結果に基づいて、TG2活性阻害剤や酸化ストレス抑制剤を使用して、脂肪肝マウスまたはNASH病態マウスに対する肝保護効果を評価し、肥満やNASHを含む慢性肝疾患の治療へ応用する可能性を検討する必要がある。
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