研究課題
基盤研究(C)
CD30は主にリンパ球に誘導され増殖などに関与する膜型レセプターである。近年、微小管阻害薬を付加した抗CD30抗体が臨床応用され注目されている分子である。ヒトT細胞白血病ウイルス1型 (HTLV-1)の持続感染は成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)を引き起こし、未だに多くが予後不良であるため対策が急務である。申請者らはHTLV-1感染細胞の一部がCD30を発現、ゲノム異常を伴うことを報告した。本研究ではCD30によるゲノム異常の誘発と細胞への影響を、HTLV-1感染細胞をモデルとして解明する。成果はCD30の腫瘍化への関与の解明、ATLの発症予防と治療の革新的診療体制の構築に寄与しうる。
CD30刺激はHTLV-1感染細胞にDNA損傷を誘導、その結果クロマチンブリッジが形成されて細胞分裂異常が起こり、その繰り返しによりゲノム異常が蓄積していくと考えられた。さらにCD30刺激によるDNA損傷はホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)活性化を介した活性酸素(ROS)の誘導が原因であることが示唆された。CD30刺激はPD-L1(CD274)の発現上昇を誘導してHTLV-1感染細胞の細胞性免疫による排除を阻害しうると考えられた。Tax はCD30の誘導には関与していないと考えられ、それぞれゲノム異常の誘発と病態の進展に関与する可能性が示唆された。
本研究によりCD30はゲノム異常の蓄積、遺伝子発現の変化、PD-L1の誘導によりHTLV-1感染細胞のクローン進化や免疫回避に関与してHTLV-1感染者の病態の進展に関与しうることが示唆された。CD30を分子標的とした新規治療法がATLの発症予防と治療に重要な役割を果たしうること、PD-L1誘導に関与しているNF-κBの阻害薬開発の重要性を示唆した。
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