研究課題/領域番号 |
20K07425
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
池田 八果穂 大分大学, 医学部, 講師 (80363547)
|
研究分担者 |
長谷川 英男 大分大学, 医学部, 名誉教授 (00126442)
松浦 恵子 大分大学, 医学部, 教授 (00291542)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | Hippo pathway / モデル生物 / 線虫 / 阻害剤 |
研究開始時の研究の概要 |
Hippo pathwayは進化的に保存されたシグナル伝達経路として、細胞や臓器の大きさの制御、腫瘍の抑制、幹細胞の維持や損傷組織の再生の調節など、生理的あるいは病的に重要な機能を担っていることが明らかになっている。本研究では線虫C. elegansを用いてRNA干渉法によりHippo pathwayの構成分子をノックダウンし表現型を解析する。次に表現型の回復を指標に、新規PPI(protein-protein interaction)阻害剤ライブラリーをスクリーニングする。本研究により、新しい生体スクリーニングシステムを構築し、癌治療・再生医療に応用可能なすぐれた新規薬剤の開発をめざす。
|
研究実績の概要 |
Hippo pathwayは、生体内において細胞の増殖、器官のサイズ、腫瘍の抑制、発生や再生の制御といった生命活動で重要な働きに関係しているシグナル伝達経路であり、ヒトだけでなく多くの動物に進化的に保存されていることが知られている。本研究で使用する線虫の一種Caenorhabditis elegansは体長が約1 mmと小さく、卵から成虫まで約3日で成長するため、マウスなどに比べ大きな飼育設備を必要とせず、短期間に大量に培養することが利点であり、また体が透明であるため顕微鏡観察に適している。本研究ではHippo pathwayのコンポーネントをノックダウンしたモデル線虫を作成して表現型の変化を詳細に観察すること、新規PPI阻害剤を用いて形態変化を回復する化合物を同定することを目的とし、Hippo pathwayを制御する薬剤評価システムの構築を目指している。2020年度には、Hippo pathwayコンポーネントのひとつであるYAPをノックダウンした線虫を作成し、成虫の陰門が突出した形態変化を観察することができた。2021年度には、YAPに加えて 3つのコンポーネントについてそれらの遺伝子単独とそれらの組み合わせを欠失した線虫を作成して形態観察を行い、陰門突出の他に体長にも差が生じることが分かった。また、YAP阻害剤であるVerteporfinを用いて実験をしたところ、陰門突出の割合に差が生じることが分かった。2022年度は遺伝子の組み合わせと形態変化、阻害剤の効果についてさらに比較検討し、C. elegansをモデル生物とした薬剤効果評価システムの構築を目指した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線虫C. elegansの培養は、大腸菌を餌として与え、通常はプラスチックシャーレとNGM寒天培地を用いて行うが、本研究ではより小さな環境でより多くの条件を検討できる培養方法が望ましい。また、RNA干渉法や薬剤の影響を評価するには寒天培地ではなく液体培地が適していると考えられる。そこで、2020年度には12穴プレートを用いて寒天を含まないNGM液体培地で実験を行い、培養が可能であることが分かった。2021年度にはさらに24穴プレートや48穴プレートでも実験を行い、培養条件を検討することができた。本実験ではフィーディング法を用いたRNA干渉によって遺伝子のノックダウンを試みている。フィーディング法とは目的とする遺伝子を導入した大腸菌を線虫に餌として食べさせることによって線虫の遺伝子をノックダウンする方法である。2020年度にはYAPの遺伝子であるyap-1をノックダウンしたモデル線虫の作成をおこなったが、2021年度はyap-1に加えcst-2、sav-1、wts-2についても単独あるいはそれらの組み合わせを欠失した線虫の作成を試み、2022年度は引き続き形態変化の観察を行った。その結果、欠失した遺伝子の種類や組み合わせによって陰門の突出が生じる、体長に差が見られるといった形態変化が観察された。また、YAP阻害剤であるVerteporfinを加えたNGM液体培地でも線虫を培養して比較を行なったところ、Verteporfinを加えた方が陰門突出の割合が多く観察された。これらの結果から、Hippo pathwayの複数の遺伝子についてノックダウンした線虫が作成できること、薬剤の効果を検証する実験が可能であることが示されたと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの実験でHippo pathwayのコンポーネントをノックダウンした場合の陰門の突出や体長の違いについて表現型を観察することができたが、実験の回数やサンプル数を増やして統計学的な解析をして再現性のある結果を得ることが必要である。また、実体顕微鏡およびレーザー共焦点顕微鏡を用いて表現型の詳細な観察を行う。RNA干渉によるノックダウンと同時に新規PPI阻害剤ライブラリーの化合物をNGM液体培地に加えて線虫を培養し、表現型が回復するような化合物を探索する。阻害活性が見られた化合物については標的タンパク質との結合性を調べる。またVerteporfinなどHippo pathway阻害剤として知られている薬剤と効果を比較する。以上のような方針でモデル線虫を用いて新規PPI阻害剤のライブラリースクリーニングを行うことでHippo pathwayを制御する薬剤の開発と評価システムの構築を目指していく。
|