研究課題
基盤研究(C)
TGF-βファミリーシグナルの異常は、難治性血管疾患の発症に関与している。しかし、血管病変が引き起こされるメカニズムは未解明であり、これら疾患の有効な治療法は存在しない。応募者は血管・リンパ管内皮細胞特異的TGF-β/BMPシグナル欠損マウスを解析し、これらマウスが難治性血管疾患モデルになりうる可能性を見出した。本研究では、マウスの生体血管において、TGF-β/BMPシグナルの均衡崩壊に起因する、血管病変のメカニズムおよび腫瘍血管に与える影響を明らかにし、難治性血管疾患治療薬および腫瘍血行性転移抑制薬の開発を目指す。
内皮細胞特異的なBMPシグナルの欠損により、肺高血圧症モデルマウスを作成することができた。この遺伝子改変マウスの解析からは、肺高血圧症の発症メカニズムと治療薬の開発に繋がる可能性が高い。さらに、がん悪性化因子としても働くTGF-βは、腫瘍の血管内皮細胞やリンパ管内皮細胞にも影響を与え、転移促進に働くことを明らかにした。内皮細胞のTGF-β阻害は、がん転移を抑制する治療薬の開発に繋がると考えられる。また、TGF-βファミリーに属するミオスタチンの阻害薬により、効果的な筋肉増強効果を認めた。特にがん悪液質モデルマウスでは食事摂取量増加と筋肉消耗阻害が治療ポイントになることを報告した。
肺動脈性肺高血圧症は予後不良の難病である。本研究で作成した遺伝子改変マウスは有望な肺高血圧症のモデルマウスと考えられ、今後の病態発症メカニズム解明や治療薬開発に役立つ可能性が高い。さらに、TGF-βシグナルは様々な側面で悪性的に働くことが示され、その阻害剤の開発は腫瘍転移抑制につながる可能性が高い。開発したミオスタチン阻害ペプチド・MID-35はアナモレリンとの併用治療により食餌摂取量と筋肉消耗を効果的に改善できることを見出した。がん悪液質患者の治療において食事摂取量増加と筋肉消耗阻害が治療ポイントになると期待される。
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